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雨宿りのふたり

雨宿りはあくまでも一時的なもので、そこに一生止まっているわけではない。
当然。

だからいずれ、何なら早い段階で、ここから離れることになる。
それが許せなかった。
離れる前に言わなければならないことがあって、それをまだ言えずにいて、何度も、何度も、言い出そうと試みるが、僕にはその些細な勇気が足りなかった。

君は、何にも言わずに空を見ている。
そこに何があるのか、何もない。
雨を生み出し続けている空を睨んで、君は何を考えているのか。
僕にはわからない。

ひとつ、わかっているとすれば、僕らは偶然、同じ場所で雨宿りをしている。
それだけ。

幸い、雨はまだ止みそうにない。
走って帰り、電車で白い目で見られるリスクも負いたくない。
当然傘はない。

もう少しだけ雨よ、降り続けてくれ。
僕は願うが、きっと突然雲間から太陽が差し込んで君は、最後に微笑んだ。

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