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つわものどもが夢の跡②(国上寺)

  ※写真……国上寺本堂の壁画より


【きっかけ】

世間から離れ、我が道をゆく「つわものども」に年々惹かれるようになり……。

つわものどもの住処すみかや風景、遺された作品に思いを寄せる貧乏旅を敢行しています。

【前回まで(五合庵)】

五合庵は、良寛さんの夢の跡。
38歳から58歳までの20年間、五合庵で暮らした彼は、
「焚くほどは 風がもてくる 落葉かな」
と詠みました。

「煮炊きするための燃料は、風にのって飛んでくる落ち葉。物の乏しい山の暮らしでも満ち足りている」と達観。

電気も水道もガスもない江戸時代とはいえ、山奥の網戸無し、風呂無しワンルームでも充足する暮らしのナゼ……。

【托鉢行脚】

良寛さんの生き方は、結構破天荒。
放浪のようなことをしています。五合庵に入るまでの道のりを見ると……

○実家の豪商兼名主を継がず、僧を目指す。
○岡山のお寺で修行(12年)し、修了
○住職にならず、托鉢行脚
  ※『荘子』を携え放浪
○新潟に戻り、五合庵に入る
  ※国上寺の隠居所

名士の長男に生まれたのに、家を継げなかった無念はいかばかりか。

しかし、無念は無念として、地方の政財界で競争する稼業に見切りをつけ、修行の道に進みます。

大正解であったといえまいか。

なぜなら、結果論ですが、良寛さんは自分に向いていたであろう道に進み、後世に「作品」を遺すことができたからです。

出雲崎の実家の稼業は、経済原理、競争相手、時代の流れに負け、衰退し、今は跡地が残るだけです。

それに比べて良寛さんが遺したものは沢山あります。

作品だけでなく、生きざまみたいなものもです。


良寛は托鉢を行うことで布施(ふせ)を行いました。

 托鉢とは財施(ざいせ)と法施(ほうせ)などが同時に行われることです。人々からお米やお金などの財の布施をいただくと同時に、良寛は人々に様々なものを施しました。法施、無畏施(むいせ)、和顔施(わげんせ)、愛語施、仏徳施などです。

「良寛ワールド」より抜粋

家を継げず、一度は絶望したかもしれないが、12年の修行と数年の放浪で自分を作り直し、
五合庵で20年暮らし、托鉢で人々と交流し、作品を遺した。

もっと本を読んだり、作品を見るため、記念館を訪ねたくなりました。

やはり、自分も「放浪」し、自分を変えたくなりました。

【夢の跡(浄土)】

折角なので、国上寺に寄ってみましょう。

24時間空いているお寺って珍しいですよね。

いつでもお参りくださいという粋なはからいを感じます。


山深い五合庵から坂道を登る。舗装されていないがよく管理されている道だ。山歩きの人を見かける。良寛さんや万元上人もここを歩いたのだろう。いい道だ。江戸時代にタイムスリップ。



ここを登ると浄土があるという。心がくすぐられる。自信があるんだなあ。
本当に浄土があるのか……?



浄土だ。つわものどもの夢の跡。要はたくさんの無名の人々の想いがツマッテイルわけですな。



本堂は300年以上前のものらしい。万元上人が人生をかけ、地元の方々が作り上げた作品か。良寛さんもこの額を眺めたのだろうか。なんと書いてあるのやら。。

浄土とはおそらく、人によってさまざまなイメージがされているものでしょう。
実際には、天災や人災に満ちている現世には、厳密な意味での浄土など存在しないのかもしれない。

それでも、旅の間、確かに僕は浄土にいるような気分を味わっているような気がしています。

【現世に戻る】

多くの人々は生業をもち、
同じ場所で役割を与えられています。

士農工商などと、職業選択の自由がなかった江戸時代と比べて、現代は格段に自由であることだけは間違いないでしょう。

さらに、関所などがあり、一生に一度「伊勢参り」ができれば御の字であった時代であったことを考えれば、現代の自分などは、毎週のようにクルマや電車で出かけて、その土地の名物を食したり、名作に触れたりすることができ、ほとんど貴族や大名の暮らしをしているといっても過言ではないような気もします。

ただ、だからといって自分は決して浄土にいるわけではないのです。

仕事での苦悩も尽きず、
健康不安も消えることはなく
老いを諦めることもできず、
スッキリすることはない毎日を送る。

檀家が減り、葬式を本堂ではやらなくなるなど、時勢の変化はめまぐるしく。現世では、どこの世界でも問題山積のようだ。

憂い、退散するのも一手。万元上人のように立ち向かうのも一手。良寛さんは、逃げたようで実は逃げていなかったような気も
する。僕はどうすればいいのか……
旅を繰り返すほかはない。


まだ午前六時過ぎ。まだ現世に戻らなくてよい、旅の途中。

良寛さんが生まれた出雲崎に向かいます。

        (つづく)




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