老犬介護と朝
AM3:30から始まる老犬介護
ハルは朝、ひどいときには3時半ごろ目を覚まし、わんわん鳴いて起きたことを知らせる。
私は外へ出たくないので、おやつなどを食べさせて時間をつなぐが、ハルは食べ終わるとしばらくしてまた鳴き始める。
仕方がないので外へ連れ出し、真っ暗な中、ハルを乗せた車いすをガラガラ引きながら町内を歩く。
車いすの音が響くので、なるべく迷惑にならない道を選ぶと大通りになってしまう。
誰もいない、まだ人々が寝静まったこの時間帯に、女一人と老犬で歩くのはなかなか怖い。そんな時間帯に人に出会おうもんなら、まず構えてしまう。
向こうも車いすをガラガラ引いている私に驚く。お互い、この時間帯に人に遭遇することはやはり驚きか恐怖以外ないわけだ。
最近気が付いたのだが、3時台ってまだ世の中が眠っていてシンとしている。4時ごろになるとだんだん人々が目覚めはじめ、街が動き出す気配がするのだ。
それは、いつも行くスーパーに職員さんが到着するのを見かけたり、通りに車が走り出したり、そんな朝の移ろいゆく時間のことを私はハルと一緒に歩くまで知らなかった。
もちろん毎日が3時半ではなく、6時まで眠ってくれることもあれば、7時まで寝ていることもある。その時によって違うのだが、それがなぜなのかはよくわからない。こっちとしてはとにかく6時までは寝ていてほしいと願うばかりだ。
老犬介護ってどういう時間なんだろう、とふと考えてしまうことがある。
渦中にあると振り回されている気持ちにしかならない。
正直、しんどいし気が狂いそうになるし、叫びたくなることもある。
1日が犬で始まり、犬で終わるからだ。
人間みたいに介護休暇がとれるわけでもない。人に説明が難しいし、ともすれば憐れんだ目で見られてしまう。
でも、だからといって私は老犬介護をやめたいとは思わない。
ただ、休みたいとは思う。
それは本気で思う。母にも休んでほしいと思う。
でもハルは容赦なく私たちを呼び出し、動かす。
途方に暮れることもあるけど、朝の始まりに立ち会ったり、街が動き出す気配を感じたり、夜が明けてくることの喜びや安心感については、きっとハルに振り回されなければ経験できなかっただろう。
当のハルは別に何を思っているわけでもなく、散歩ができて、おしっこもできて、眠たくなったら最高やな、くらいかもしれない。
人間だけが、ビビったり、感動したり、発見したりしているわけで、一体、老犬介護ってなんなんでしょうね。