そこそこ読書 「女は賢く妻は可愛く」野村沙知代 著

 野球選手で監督でもあった野村克也氏の妻である野村沙知代氏が夫婦、子育て等に対して、自らの経験を通した知見をまとめている本である。書き出しは60になる著者がこれからの生き方を考えるという形になっているが、語られる内容の多くは時代や年齢を問わないものである。要は古い本だけど今でも通用する。

 夫婦で円満にいるにはどうしたらよいのか、子育てをどうすればよいのか不安を感じる人は多いだろう。専門書でいろいろと知識を得ることが出来るが、それでもしっくりこない、上手くいかない人は多いのではないか。その根本的な問題を浮き彫りにしてくれると感じた。

 それを一言で表現すると芯のある人間になる必要があるという事だ。芯の強さとはどんなことでも他人に流されるのではなく、確固たる自分をもつという事だ。その時に妻、母、女になる必要がある事が肝だと感じた。
 当たり前だが人は一つの面を持っているわけではない。夫との間では妻になるし、子供の前では母になる。友人の前では一人の女としてふるまう必要がある。そしてそれらを、他人から与えられたような都合の良い人を演じるのではなく、自分自身で演じていく必要がある。

 その為に注意したいのは二点。失礼な言い方になるかもしれないがが、野村沙知代氏が常識を持っているという事。常識とは自分と自分以外を優先するべきところをちゃんと見極めることができるという事だ。その為には、普段から勉強している癖をつけなくてはいけない。そして気持ちがまっすぐでないといけない。
 二点目は、野村沙知代氏の性格の部分がかなり大きいのではないかという私の懸念である。この本が出版されたのは2003年。今でこそ多様な働き方が叫ばれているが、女性は男性の言う事を聞いて家庭にはいるという考え方が今よりもありふれていた時代である。そもそも彼女が生まれたのはそこから約60年も前である。そういった考え方が常識という中、世間の手を借りずに自分の主張をできるという稀有な存在である。
 
 どうしたらそのような人物になれるかという本ではない。
 著者の言っている事がどれだけ的を得ているのかという事、そしてそのような芯のある生き方が出来るのは持って生まれた性格を無視して考える事は出来ないのだろうという事を注意して読む必要があると感じた。

 私自身は男だが著者のような芯のある生き方は憧れる。同時に簡単にこのように生きられない事もわかる。だが「それではいかん」と現代では貴重なお𠮟りを受けるのは不思議と心強くもある。

 まずは部屋の片づけからだ。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集