そこそこ読書 ドキュメント 湊かなえ 著

 この本は高校部活小説と紹介されている。シリーズものであり前作には「ブロードキャスト」がある。
 高校部活小説がどんなジャンルなのか私はあまり理解できていないが、これまで読んだ湊かなえさんの小説がどれもダークな内容だったため、いつ事件が始まるのか、何がとっかかりになるのかを疑心暗鬼になりながら読み進めていた。
 しかし、一向にラベルに紹介されているような事件が起こらない。序章と終章を除いて7章あるが、2章まで読んでも事件らしい事件は起こらない。気になったのでキーワードを探してめくりながら眺めていると、どうやらほとんど後半になってから事件が起こるようである。

 今回もダークな本なのだろうと勝手に思いながら読んでいたせいもあり、特に害のないであろう登場人物まで「犯人」になるのではと疑いながら読んでしまった。
 自分で展開を予想してみたりもしたが、作中における傷心の主人公が抱く幻想と丸被りしてしまった。ちなみに主人公は「下手糞な脚本」、「そうだったらいいな劇場」と散々な評価をしている。自分の底の浅さが面白い形で返ってきたのは愉快であった。

 未だに登場人物が頭の中で整理するのに時間がかかる。このセリフは誰が喋っているのか、さん付けで呼ばれているこの人は男か女か、そもそも主人公ってどっちだったか。
しばらくこんがらがるのでこの苦痛には慣れていくしかない。

 フィクションを意識させない事が作品の良さの一つではないかと感じる。ルポルタージュや専門書とは違って言葉を選ばなければ基本的に小説は嘘の類である。少しでも違和感を感じてしまえばあっという間に噓がばれてしまう。SFとか漫画を馬鹿にしているのではなく、作り手の視点で見る事を悪いとも思わない。ここら辺を上手く説明は出来ない。

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