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雨 (お題:放伐と禅譲 ショートショート)
(448文字)
閉店後も残り浴びるほど呑んで、グラスを投げると悪態をつき始めた。
「寝ろ。迷惑だ。」マスターが言う。
「迷惑?あっそう。」あたしは粘着質にいった。
「みんなそう。体が目当てなだけ。あんただってそうでしょう、ほら。」
服を脱ぎ始める。
「いい加減にしろっ」
腕を掴んで店の外に出された。土砂降りだった。「死んでやる。」あたしは叫んだ。
ガラス戸を挟んだ彼の目は哀しみに血を流していた。
取り返しの付かない傷を付けてしまう。この人だけは、いけない。
長い間、わたしはあたしに監禁されていた。
店の庇から一歩踏み出し、叩きつける雨を振り仰いだ。
放伐と禅譲。
どうするの。大人しくわたしを開放しないなら、あなたを抹殺する。
わかっている。わたしは守られて来た。
幼いあの日。あたしはわたしを青い箱にしまい込んだ。
もう いいよ。
自分で歩かなけらば行けないの。不器用でも、傷ついても自分で引き受けなくてはいけない。
生きたいの。
静かに禅譲がなされた。
「ありがとう。」小雨になった。
参加させて頂きます。
山根あきらさま
企画をありがとうございます。