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「わたしの知る花」を読んで「タイミング」の大切さを考える
✳︎あらすじ✳︎
「あんたは、俺から花をもらってくれるのか」犯罪者だと町で噂されていた老人が、孤独死した。部屋に残っていたのは、彼が手ずから咲かせた綺麗な《花》――。生前知り合っていた女子高生・安珠は、彼のことを調べるうちに、意外な過去を知ることになる。淡く、薄く、醜くも、尊い。様々な花から蘇る記憶――。これは、謎めいた老人が描く、愛おしい人生の物語。
「タイミング」が大切だ
これが、この本が1番言いたかったことではないだろうか。
物語は全部で5章+エピローグからなる。
そして、全て語り手が違う。
全く別の物語と思いきや、全て一つの線で繋がっている。
一章 ひまわりを花束にして
二章 クロッカスの女
三章 不器用なクレマチス
四章 木槿は甘い
五章 ひまわりを、君に
エピローグそれぞれの
見てもわかるように、5章全てに花が入っており、その花言葉も物語のキーワードとなる。
特に、ひまわりが二回出てくる、
この物語の最重要な花だ。
花言葉は「私はあなただけを見つめる」
謎めいた老人=絵描きジジィが
安珠の住む街の公園でノートに鉛筆で何やら書いているところから物語が始まる。
安珠は可愛く、気の強い、素直な女の子だ。
高校で出会った、イケメンでリーダーシップ力もある貴博という彼氏もいるが、彼の物事を上から目線で見る、傲慢な態度に嫌気がさし、
別れを切り出す。
もう1人、同じ高校に通う、奏斗という、保育園からの付き合いの友達もいる。
奏斗は、色白でおとなしいタイプだ。
安珠は貴博といるより、奏斗と一緒にいる時間の方が長く、意気投合している。
ただ、奏斗には、ずっと1人きりで抱えてきた悩みがある。
それは、自分の心の性別が男か女かがわからない、いわゆるLGBTQである、という悩みだ。
安珠も薄々わかっていたにも関わらず、
見て見ぬふりをしていた。
貴博の話の悩みを奏斗に相談しているうちに、
奏斗は自分の悩みを、貴博に相談しようとするが、彼の性格にうんざりしていた安珠は、
断固反対、そこから、
「お母さんに相談した方がいいよ」
と言った安珠の一言で、
奏斗の気持ちは大爆発してしまう…。
「誰も僕の気持ちなんてわからない。」と。
安珠はありのままの自分を理解しようとしてくれない、誰かにその責任を転嫁して、自分は深く関わりたくないんだ、という切実な気持ちからだった。
安珠も自分の気持ちを言い当てられて、
泣いて泣いて涙が枯れるまで泣いた。
ちゃんと奏斗のことを理解しようとしてい
なかったのだと。
そんな出来事があっだ後、
公園で泣き崩れる安珠を
絵描きジジィは書いていた。
安珠は好奇心で近寄って、
嫌がる絵描きジジィをよそに、
どうしても見せて欲しいと頼み込んで見せてもらった絵が…。
わたし(安珠)だけれどもわたしじゃない、
どこまでも優しく、この女性が大切だとわかるような絵だった。
安珠は絵描きジジィに自分の悩みを相談すると、
彼はこんなふうに答えた。
「無二の親友になれるタイミング、過去の友人になるタイミングに、もちろん、きっぱり決別するしかないタイミングもある」
「話を聞く限り、あんたたちはまず、理解が必要だと思う。理解というのは、互いの努力が一方的じゃ無理だ。相手と自分が同じぐらいの努力で、すり合わせていくしかない。どちらが上回っていてもズレが起きる。
思い込みや知ったかぶりが生じる」
「まず理解をする深さを求めるのなら、後ろめたいことでも、隠したいことでも、向き合って詳らかにしないといけない。
何もかもさらけ出す。
相手が全部見せてくれたら、丸ごと受け入れる。
どんなことでも。あきれるようなことも、傷つくこともあるかもしれない。
でもそれは、思い込みから生まれる感情なんだ。
思い込みに振り回されてることなく、ただ芯を見て、受け止めるようにしろ。
話をしろ、何度だって言葉を重ねて相手の言葉に耳を傾けろ。
一旦離れてしまった気持ちはもしかしたら取り戻せないかもしれない。
でも、きっと間に合うと信じろ。」
奏斗ともう一度、安珠は向き合う決心をする。
絵描きジジィもまた、誰かと決別したことを後悔している1人だった。
安珠は絵描きジジィが実は昔、祖母と出会っており、知り合いであったことを知る。
名前は平さんと言う。
安珠は、彼が描く絵の中の女性は、どことなく祖母に似ている気もしたのだ。
ひまわり=あなただけを見つめている
もっと早く、それを伝えられたら、
平さんが亡くなってから、
大事に書いていたノートによって、
色々と波瀾万丈な平さんの過去が明らかになっていく。
平さんと祖母の関係は、、、
安珠と奏斗の関係はどうなっていくのか、
気になる方はぜひ続きを読んでみて欲しい。
「タイミング」
毎日、私たちは日々、小さな決断をしている。
朝ごはん何を食べるか、今日一日誰と何をして過ごすか、何時に寝るか…。
それらの選択が少しでも違っていれば、
出会う人もなにもかも違った別の人生になっていただろう。
私は、もっといろんな人に
「ありがとう」
を伝えなければ、と思っている。
両親へ「産んでくれて、大切に育ててくれて
ありがとう」
祖父母へ「可愛がってくれて、大切にしてくれて
ありがとう」
夫へ 「出会ってくれて、大切にしてくれて
ありがとう」
友達へ「住む場所も遠くてなかなか会えないけど、
それでも会う機会を作ってくれて、
悩みを聞いてくれて、ありがとう」
祖母はもう、この世にはいないから、
もっと早く伝えておけたら良かったなぁ…。
恥ずかしくて、なかなか普段言えないけど、
タイミングを逃すと一生伝えられずに
後悔してしまう。
もっとちゃんと近しい人と、
向き合って、対話して、理解し続けて、
丸ごと受け入れる努力もしていかなければ。
後悔先に立たず、にならないように、
大切な人たちと、ちゃんと向き合っていきたい。
そんなことを考えさせられた。
因みに…ひまわりは本数によって、
意味合いが異なるらしい。
本数別のひまわりの花言葉
1本:ひと目惚れ
3本:愛の告白
7本:ひそかな愛
11本:最愛
99本:永遠の愛
108本:わたしと結婚してください
999本:何度生まれ変わってもあなたを愛する
もし、だれか大切な誰かがいるのから、
本数にも意味を込めて渡してみるのも
いいかもしれない。
長文になりましたが、とっても最後は心温まる、自分のバイブルにしたいと思える本でした。