網走番外地 望郷篇(1965)
網走番外地 望郷篇(1965、東映、88分)
●監督:石井輝男
●出演:高倉健、嵐寛寿郎、杉浦直樹、田中邦衛、待田京介、中谷一郎、砂塚秀夫、由利徹、桜町弘子、東野英治郎、安部徹
網走番外地シリーズ3作目の本作は舞台が長崎。
荒波の東映三角マークに船の汽笛を被せてのスタート。
シリーズというよりパラレルな世界観であるため、この作品での橘真一は敵対する組の頭への傷害で罪を追い、その刑期から故郷へ還ってきたという設定となっている。
ただし第1作で出ていた田中邦衛演じる大槻は、同じ役で引き続き出ている。
元居た組は旭組だが、組長の表札に「旭統一」と書かれていて一瞬何かと思った。名前なのね。
長崎が舞台なので坂道を昇り降りする画が多い。
中盤で網走での刑務所暮らしを回想するシーンがあり、多分それが『網走番外地』のしるしなんですよというアリバイ的インサート。
にしても刑務所の中にいて娑婆のことを思うのではなく、外にいるのに刑務所のことを回想するのがなんか面白い。
ストーリーは任侠映画のよくあるパターンになっているが、その他の要素としては、黒人ハーフの孤児の少女との絡みが描かれているところがポイント。
鏡を見ながら「あたいどうしてこんな黒いんだい?」というあまりに純粋でまっすぐな問いにも、刑に服している間に母親を亡くした真一が真摯に向き合うところがほほえましくも心打たれる。
大槻率いる網走時代の仲間が集まり、真一たち旭組の面々に挨拶の口上をする場面での由利徹は爆笑。
安井組がやとった殺し屋の人斬りジョージ(杉浦直樹)という人物が終盤現れるが、黒いサングラスに黒いマント、口笛を常に吹き肺病持ちで咳をしているという特異なキャラクターだ。
挑発してくるジョージに自分たちはカタギだと言う真一だが、「カタギさんが粋なことしてるじゃねえか」と刺青を指摘される。
さらに「カタギさん相手に切った張ったをするつもりはねえよ」と皮肉られると、黙って刺青にライターの火をつけ消そうとする真一。
黙って見つめるジョージだったが、おもむろにタバコを近づけ火をつける。
「まだ全部消えちゃいませんぜ」
「お前さんみたいな男は、また渡世に戻ってもらいてえからよ。手を引くぜ」
そういって立ち去る。
この辺りの流れがいかにも男の美学っていう感じでクサいな~と分かっていても、しびれる。
ラストは真一と、上下白のスーツを吐いた血で所々に赤く染めたジョージが一騎打ち。
戦いはストップモーションで捉えられ、一瞬のうちに終わる。
多分、この作品単体で観ても十分楽しめるし、むしろ単体で観たほうが情報を新鮮に受け取れる分、存分に楽しめるかもしれない。
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