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女番長ブルース 牝蜂の逆襲(1971)

女番長ブルース 牝蜂の逆襲(1971、東映、86分)
●監督:鈴木則文
●出演:池玲子、賀川雪絵、弓恵子、安部徹、名和宏、左とん平、小松方正、由利徹、杉本美樹、渡辺やよい、林彰太郎、大泉滉、ピーター、山城新伍、天知茂


女番長(スケバン)映画の元祖的な作品だが、現在スケバンと聞いて想起されるようなセーラー服にロングスカートといういでたちはしておらず、そもそも学校を舞台にしていない。

アテネ団という女愚連隊的なグループの団長に主演の池玲子。よって終始「団長」という呼ばれ方をしている。

タイトルバックでは夜の繁華街が映る中、時折高校球児や普通の女子高生たちの姿が映されると、何とも言えない切ない気持ちを際立たせる。

アテネ団に新入りとして入ってきたユウコに対し、輪姦されて処女を失った悲しい過去を語る玲子。

秋本組のヤクザの土居(天地茂)が自分の娘かもしれない子とメリーゴーランドに乗る姿や、アテネ団の前団長のジュンが、間もなく返還される沖縄だが自分は帰りたくはないと語るシーンといい、居場所のない者たちの物悲しいストーリーが描かれて叙情的な気持ちにさせる。

それもすべて前提としてハチャメチャで無軌道な映画の軸があるからというのは言わずもがな。

カーセックスならぬオートバイファックはビックリというより意味不明すぎて呆然という感じ。

エレベーターが上下する中で人気歌手の由紀を犯す場面は映像的に面白かったが、由紀役の女優がまさかのアエギ声ですらの棒読みで奇怪なシーンとなっていた。

玲子と鑑別所帰りのジュンが初めて出会う時に仁義を斬り合うシーンは、確かにこの手の映画のお約束なのかもしれないけど登場人物たちのリアルな心理として客観的に見たときにコレ絶対ヘンだよねと、やり終わった後笑ったりしないもんだろうか?

そういった疑問が微塵も入る余地すらないほどに「スケバン映画」の世界観は徹底的に守られている。

「ゴロをまく」とかネリカンとかセイガクとか特殊な用語を知れてまた一つ勉強になった(?)。

タイトルに突っ込むのは野暮だが「牝蜂」の要素はなく、どちらかというと「飼い犬」や「牝犬」、「殺される前に噛みつかなくちゃ野良犬は生きていけない」といった台詞が耳に残った。

それを言い出したらブルースではなく演歌が流れまくるし、シリーズ1作目にして「逆襲」の意味もよくわからない。

ブルースでもなければ、牝蜂でもないし、逆襲でもない。

唯一の真実は「女番長」。

それがこの映画『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』。


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