恐怖女子高校 女暴力教室(1972)
恐怖女子高校 女暴力教室(1972、東映、79分)
●監督:鈴木則文
●出演:杉本美樹、三浦夏子、須藤リカ、碧川ジュン、丘ナオミ、衣麻遼子、一の瀬レナ、司京子、穂積かや、川奈良子、東映子、松代薫、金子信雄、名和宏、松井康子、大泉滉、由利徹、女屋実和子、成瀬正孝、岡八郎、蓑和田良太、三原葉子、一の瀬健、那須伸太朗、京町一代、中村錦司、榊浩子、有島淳平、池玲子
まずはタイトル。
『恐怖女子高校 女暴力教室』
恐怖=暴力
女子=女
高校=教室
同じタイプの言葉を二度重ね。串カツ屋だったら怒られてます。
この言葉の一盃口状態にまず打ちのめされた後に始まる破茶滅茶なタイトルバック。
そこで背景的に由利徹が行う授業内容が双曲線。
ってことは数III??
もちろん旧課程と新課程で時代差はあるにしても、めちゃ進学クラス(理系)じゃないか!?
タイトルバックが終わると舎弟的生徒が杉本美樹演じる女番長・迪子に「番長、何かいいことないかしら」と言う。
すると「あるわけないだろ。世の中しっちゃかめっちゃかさ。」
これを聞いて『東京物語』の香川京子と原節子の
「いやねえ、世の中って」
「そうよ。いやなことばっか」
という名場面を一瞬思い出したがもちろん世界観から何からしてあまりに違いすぎたためその残像は即座に消えた。
赴任してきた担任にパンティ、コンドーム、しまいにはナイフを投げたり、授業中全裸になったり。
女子同士でリンチをするシーンも草を燃やして火の粉をまきちらしたり水責めしたり、担任と付き合ってるという同僚の女教師を輪姦させたりとかなりえげつない。
スケバングループ同士で河原で決闘する場面もド派手にやっているが、普通だったら早々に警察に通報されるはずだろと。
その後レイプをされた過去の回想シーンを挟んで迪子が「強姦される方から強姦するほうに回った」と語る。
その姿に『バトル・ロワイアル』で「あたし、ただ奪う側に回ろうと思っただけよ」と言った柴咲コウが重なった。
転校生として登場の池玲子、登場が"皆殺しの歌"をピアノ演奏という派手なものだが、その後判明する一家心中の生き残りという境遇で一体いつピアノ習ってたのかという野暮なツッコミは、ショットガンを構えて敵のグループに凄む姿を見て宙に消えて散った。
とうとう杉本美樹と池玲子が仁義を切り合うに至り、疲れたので突っ込むのをやめた。
基本的にこの映画は、観る者の野暮なツッコミをかき消しながら進んでいく。突っ込んだら負けなのである。
ちなみにこの学校の名前は「聖光女子学園」。
ラスト、アッサリと制服を焼いて退学を宣言する彼女たちに、万が一何かの間違いで今どきの女子高生が観たとしても共感などできないだろう。
担任教師が己の教育信念をなんとかこの獣たちに教え込もうとするところに池玲子が「馬の耳に念仏だよ」と言うが、うん、その通りだね。と大きく頷いた。
ただでさえ男教師風情がこの年代の女の子をコントロールなどできっこないのだから、そのことに気づけないこの教師が一番の大バカだったという気がする。
突っ込んだら負けなのである。