見出し画像

女番長 野良猫ロック(1970)

女番長 野良猫ロック(1970、ホリ企画、81分)
●監督:長谷部安春
●出演:和田アキ子、梶芽衣子、和田浩治、藤竜也、ケン・サンダース、范文雀、久万里由香、小磯マリ、島敏光、吉川英司、十勝花子、柳美樹、富田ジョージ、島津ゆう子、大橋由香、市村博、亀山靖博、杉山元、鴨田喜由、ザ・モップス、アンドレ・カンドレ、オックス、オリーヴ

『野良猫ロック』シリーズ第1弾。スケバンではなく「おんなばんちょう」と読む。

和田アキ子は主演だが、ストーリーには絡まず、物語を形作るのは梶芽衣子とその仲間のズベ公たち。

大島渚監督『無理心中 日本の夏』の主人公のフーテン女の立ち位置に近いものを感じたが、あの女は終始きな臭い議論を続ける男たちを茶化すことによって異化する役割があったが、ここでの和田アキ子は本筋の中に漂う傍観者にすぎない。

あまりに存在感がありすぎるがゆえに一般的な劇映画において自然な役割などにおさまりようのない和田アキ子を、そのまんま異物として映画内に放置したという感じがする。

製作がホリプロであるということから当然、彼女の主演ありきで作られたわけなので、ある意味このようなキャスト設定が必然であったんだろう。

絶妙なサイケ感、「土旺日・午后」のテロップ、終盤の新宿駅でのカーチェイスなど映像的になかなか良さげな演出は光るが、ストーリーは虚無そのもの。

物語の進行はあるが、わかり切った終わりに向かって無為な日常を消化するようにしてただただ時間が過ぎていくという感じ。

和田アキ子がバイクに乗ってどこからかやってくるというシーンで映画は始まり、どこかへ行くというシーンで映画は終わる。

ちなみに和田アキ子のバイクのヘルメットが小さすぎて、すごく気になる。

「ここはあたいたちの街だもん」だとか「この街」みたいな台詞が多いのも気になった。

新宿は~」ではなく、「この街は~」という言い方は普通はそこに生きている人はしないだろう。

こういったこともこの映画のリアリティにおける不自然さを作っていたと思うし、それは徹底的に部外者である和田アキ子を主人公として置いているがゆえのフィルター効果もあるのだと思う。

エンディングの白々明けしていく朝の街の情景は何とも言えない気怠さと解放感があって良かった。

そして、梶芽衣子が美しかった。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集