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レネットとミラベル/四つの冒険(1986🇫🇷)
原題: 4 AVENTURES DE REINETTE ET MIRABELLE(1986、フランス、92分)
●監督:エリック・ロメール
●出演:ジェシカ・フォルド、ジョエル・ミケル、マリー・リヴィエール、ベアトリス・ロマン、ファブリス・ルキーニ、フィリップ・ロダンバッシュ、ジャン=クロード・ブリソー
かつてはDVDボックス内の一作だったが、今では他のエリック・ロメール作品とともにアマゾンプライムで観ることができる。
二人の少女に関するエピソードを4つ繋げたロメールによる連作短編集的映画。
本当になんてことない、言ってしまえばわざわざ映画としてフィルムに残さなければならないようなものではない日常的なことがらを、劇映画としてサラッと仕上げる腕はすごい。
大作主義の真逆をいく、ロメールの真骨頂のような映画。
○青い時間/L’HEURE BLEUE
田舎道、自転車のタイヤがパンクして困っているところで二人は出会う。
自転車に乗っていたのはパリから来たミラベル。直してあげたのは村の少女、レネット。
レネットは画家を目指して絵を描いているが「私の好きなアリ」と言うようにガーリーなマグリットみたいなシュールレアリスティックな絵の中にアリが描かれてたりして少し変わった子。
4作の中では一番完成度が高いというか、オープニングなので当然なのかもしれないが、この一本だけ切り取って見ても十分鑑賞に値する。
何げない演出なんだけど、赤いセーターのレネットと青いパーカーのミラベルの二人が牧場のヤギを見たり畑の野菜を見たりしてるだけで絵になる。
気取ったところはないし退屈なところもない、いいバランスで撮られている。
品種はわからないがフランスのヤギって日本のと違うんだなとかそんなことが面白かった。
夜明け前の一瞬の静寂の青い時間。
『緑の光線』もだったけど、ロメールはこういうのが好きなのかな。
○カフェのボーイ/LE GARCON DE CAFE
レネットが道を尋ねると親切に順路を教えてくれる通行人の男。
それに対してそれを見ていたもうひとりの男が「いやゲテ通りに行くのはこっちのほうが」と彼女そっちのけで言い合いを始める。
本当に議論が好きなフランス人。
そして通り沿いのテーブルでコーヒーを飲もうとするも小銭を持っていないレネットに対し、批難を浴びせるカフェのボーイ。
小銭を持っていない田舎者に厳しいフランス人。
この辺はちょっとした小話として終わる。
というかまあ映画全体が小話なのだが、必要以上に大仰にしすぎずシンプルに映画としてまとめる力量がやっぱりすごい。
○物乞い 窃盗常習犯 女詐欺師/LE MENDIANT LA KLEPTOMANE ET L’ARNAQUEUSE
タイトル通り、物乞いと窃盗常習犯と女詐欺師を巡る、レネットとミラベルのディベートみたいな一本。
ロメール作品全般的に言えることかもしれないが、俳優が観客を一切見ていない感じがしていて、とうとうこのエピソードでは人ごみの中を歩く二人がカメラを追い越し、背中が映るというカットが冒頭に映る。
いわゆる「ドラマ性」のない映画なのでクローズアップとか派手な演出は一切ないけれども、ここまでカメラや観客を意識させないように撮っているのがすごく面白い。
ドキュメンタリー風って感じでもないような気がするし…
○絵の売買/LA VENTE DU TABLEAU
レネットの描いた絵を画廊のところに売りに行くも、議論の末怒ったレネットが「喋らない」といういわゆる無言の誓い?状態になったところからスタート。
そこでレネットは聾啞者のふりをし、ミラベルも後から彼女のことは知らない素振りで一芝居売り首尾よく絵を売ろうとするという筋。
神聖な絵画の前でしゃべりすぎるのは冒涜だと画廊(ファブリス・ルキーニ)相手に議論をふっかけるミラベルが面白い。
これはちゃんとオチ(サゲ)が付いていて、落語のような小話になっている。