解散式(1967)
解散式(1967、東映、92分)
●監督:深作欣二
●出演:鶴田浩二、渡辺美佐子、内田朝雄、渡辺文雄、金子信雄、丹波哲郎
時代の流れと共に暴力団が社会から排斥されるようになっていった時代、題名通り「解散式」のワンシーンから映画は始まり、タイトルバックで組の旗が燃やされるという絵力のある出だし。
対立する組の組長を刺殺し、8年の刑期から帰ってきた沢木(鶴田浩二)が主人公。
すでに組は解散し、そこで石油コンビナートの利権をめぐる争いが生じていた。
開発予定の土地には沢木の内縁の妻・三枝が、彼の知らぬ間に生まれていた息子と共に、養鶏場を営みながら貧しく苦しい生活を送っていた。
その名もずばり「三枝養鶏場」。
この映画の沢木は”任侠”の世界から”暴力団”の世界へ移行する中で取り残された男である。
一人だけ着流しに武器はドス、愚直なまでにひたすらに、一歩も外れることなく任侠の常道を突き進む。
映画の舞台になっているのは開発が進む港湾地区の貧民街で、背後に原油タンクなどのコンビナートが広がる。
工場から排出される煙とそれに汚染されたかのような灰色の空の下で、金井組の組長を討ち取った時の回想がフラッシュバックのように映るシーンがあるが、そこはどこかの高級バーらしき場所で鮮やかな真っ赤な内装が強烈だ。
「昔は良かった」と言葉では言わないが、現在と過去の沢木の思いをその色調で表現している。
映画内でも「8年ってなぁ、本当に長い年月だったよ」という台詞があるが、沢木が塀の中にいた期間の大きな変化として東京オリンピックが開催されている。
劇中で特にそのことには言及されていないが、オリンピック以前の感覚ともなれば前近代的な任侠観を引きずってしまっていても無理はないだろう。
同じく、丹波哲郎演じる金井組の元幹部・酒井が報復のために沢木の前に現れる場面があるが、この酒井も娑婆にいたはずなのに古い任侠であり、居場所を奪われた二人の対決はゴミで埋め立てられたような、テトラポッドや材木が転がる東京の辺縁のような番外地で繰り広げられる。
「おれの負けだ。やれ」などとやり合っているが、美学を貫こうとすればするほど周囲の殺風景さもあいまってもの悲しく映る。
内田朝雄が暗殺されそうになるシーンは緊迫感があるはずなのにロングショットで、内田朝雄が隣の3人の芸者を盾にしてみっともない逃げ方をしていてどこかコミカルに映る。
それすらも、刺客を使って敵の頭を討ち取るような行為が時代遅れで愚かなことなんだと認定するような演出に思える。
序盤から少しずつその兆候はあったが、終盤の沢木の殴り込みはカメラがずっと斜めに傾いている。