俺にさわると危ないぜ(1966)
俺にさわると危ないぜ(1966、日活、87分)
●原作:都筑道夫
●監督:長谷部安春
●出演:小林旭、松原智恵子、西尾三枝子、北あけみ、浜川智子、左卜全、郷えい治
荒唐無稽(褒め言葉)で、中身がなく(褒め言葉)、冷静になると意味のわからない(褒め言葉)映画。
真面目な映画でないことはタイトルバックでわかる。
カメラワークや照明、原色バックなどはかなり鈴木清順っぽい。
ナンパした女が誘拐されてしまい、彼女を助けたいだけで変てこな事件に巻き込まれる男が主人公だが本人に「巻き込まれた」という自覚は薄く、むしろハードボイルドの主人公的自意識を過剰に有しているため、何が起きても不思議に思わず円滑にストーリーは進む。
謎の女からの誘惑だとか、外国人ギャングだとか10億円の金塊だとか勝手に物語は膨れ上がっていく。
女を助けた時点で映画は終わってしまう(=主人公が物語を有していない)という都合上、なかなか助けるまでに至らない。
松原智恵子は「さらわれた姫」的ポジションで正統派ヒロインを生真面目に演じている。全くセクシーさはないが下着姿にまでなっている。
小林旭はふざけながらもシャレた感じで演じている。なぜか下宿先のオヤジが百地流の忍者で、爆弾や大筒を手渡される。
忍者なのに「忍法研究所」とおもいっきり入口に看板を掲げるのはいいのか?
黒いレザーの女たちもどうやら忍者設定らしく、忍法ガムガム弾(噛んでいたガムを吐きつけて目つぶしするだけ)、忍法空飛ぶ円盤(レコードを投げつけるだけ)といった珍妙な技をくりだす。
それよりも、死に際に車の窓から片手で投げたプラスチック爆弾が後続車のフロントガラスを突き破って敵を爆死させる技術の方がすごい。
主人公の勝手知らないところで物語は進行し、女たちがみんな彼の腕の中で死んでいく。
青いペンキが血のように広がっていったり、スキあらば色彩で遊んでいる。
タイトルの『俺にさわると危ないぜ』もよくよく考えると、元はと言えば小林旭が松原智恵子をナンパしなければ彼は事件に巻き込まれることはなかったはずだ。
なので、彼が「俺にさわると危ないぜ」と言うのは見当違いで、どちらかといえば「さわると危ない」のは彼女の方じゃないかと言う気がする。
無駄にスタイリッシュ、無駄にポップで、たのしい映画。