昭和おんな博徒(1972)
昭和おんな博徒(1972、東映、91分)
●原作:藤原審爾
●監督:加藤泰
●出演:江波杏子、松方弘樹、天知茂、渡辺文雄、嵐寛寿郎、山本麟一
オープニング、雨の中の敵討ちが前触れもなく唐突に、粛々と行われる。
映画はこれが規定路線なのだと言わんばかりに殺しの最中からクレジットを映し出していき、この復讐にいたった経緯を回想で約1時間挟んでからまた進行するという構成。
小津映画的な畳とちゃぶ台の水平目線ではなく一段下がった三和土からのローアングル煽りショットの連発。
さらに布団だったり襖だったりを挟んでやや右側に江波杏子が配置されているといったようなアシンメトリーな構図や、口上のシーンをはじめとして人物を真横から撮るようなショットが多いのも印象的。
動く人物をカメラが動いて撮るというシーンは皆無でほとんどのシーンがフィックス、さらにたいていはいわゆる人物の板付きで、フレームインもあまりなかったように思う。
江波杏子が陸橋から投身自殺をしようとするシーンは人工的でいかにも現実味がなくて良い。
それにしてもそのシーンやラストの壮絶な敵討ちのシーンでは江波杏子の顔面は白塗りしたのかというくらい蒼白くて、なんだか死神みたいだった。
陽性といったキャラクターではないので雨や雪、霧や夜を背景にされていることが多く、それがよく映えている。