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やさぐれ姐御伝 総括リンチ(1973)

やさぐれ姐御伝 総括リンチ(1973、東映、86分)
●監督:石井輝男
●出演:池玲子、内田良平、春日朱実、愛川まこと、嵐寛寿郎、城恵美、名和広、早乙女りえ、凡天太郎、遠藤辰雄

いきなり説明もなく殺陣から始まり徐々にお蝶(池玲子)が全裸になってゆくというタイトルバック。

赤い雨の中、投げ捨てた赤い唐傘が上手いこと目隠しとなっているカッコイローアングルのショット。

神戸港に降り立ったお蝶の赤いスカーフ(これが原因で麻薬密売組織に間違われ拉致される)も鮮烈だが、その後もステンドグラスだったりと原色を随所に使った派手な色使い。

鈴木則文監督による前作『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』でもレイプシーンでなぜか畳がカラフルなマットっていうシーンがあったが今作でも踏襲されている。

お蝶を助けてくれた扇屋一家の譲二を追跡するシーンでは気づいたらきれいな菜の花畑に二人がいる。

なんかもうヴィットリオ・デ・シーカの『ひまわり』じゃないんだからっていうような突如としてメロドラマみたいな光景。

よく見ると直前のカットでは路地の道端に咲く菜の花にフォーカスしてからの一気に菜の花畑へジャンプという編集になっていて小気味いい。

お蝶が以前世話になった先代の扇屋親分との思い出を回想するシーンも市川崑『おとうと』みたいな情感ある雰囲気でとても絵になっている。

終盤、色仕掛けでお蝶が扇屋一家の親分と床を共にする場面も怪しい色彩だし床に水槽があって清順映画みたいに真下から撮ったりという奇妙なセット。

登場人物に目を向けるとどうみても”さそり”が登場するのだが劇中では”キリストの好美”という。

キャラ濃すぎだし本当に思いっきり"さそり"なんだけど、紅衿団の意匠含めて70年代って感じでカッコいい。

自分たちを麻薬密輸に利用していた女スリ集団がお蝶と手打ちをし、決起する場面は全員裸となっているがここまでくるとエロよりも凄みのほうが強い。

デカ虎とこれまでの負け分を賭けて花札勝負をするシーン。

イカサマの札を着物と一緒に脱ぎ捨てて札は天井に突き刺さる。

デカ虎の指を詰めるお蝶。

詫びを入れお蝶さんだけに恥をかかせないと着物を脱ぐ女将、の流れは非常にテンポよくスリリングだった。

その恰好じゃ目立つよとお蝶に洋服を投げ渡すキリストの好美との無言の呼吸の場面とか、女同士の仁義というかサッパリした連帯感というのを随所に感じる映画である。

扇屋先代組長の娘が監禁されているという精神病院がクライマックスになるのだが、まあもうここまで来ると通常の任侠映画の要素など微塵も存在しない異常な世界観が展開される。

紫色の背景、全裸の女たち、毒池のような謎のプール、手榴弾を投げてるのにその後に今さら花札を手裏剣のように投げて突き刺したり。。

裸の女に蹂躙されるいくらなんでも弱すぎな男たち、プールの下からのあおりショット、噴き出す鮮血。

ラストは謎の夕陽、池玲子の歌をバックにお蝶についてゆく裸の女たち。

女囚さそり 第41雑居房』のラスト並に謎の終わり方であった。

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