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無鉄砲大将(1961)
無鉄砲大将(1961、日活、82分)
●監督:鈴木清順
●出演:和田浩治、清水まゆみ、芦川いづみ、葉山良二、佐川ミツオ、山岡久乃、菅井一郎
もはや日活チャンネルと言っても良いくらい大量の日活作品がアップされているアマゾンプライムで鑑賞。
数々の動画配信サービスがあるしどれも一長一短だと思うが、DVD化されていない初期マイナー作まで揃っているという意味で鈴木清順ファンからすればアマプラ一択だ。
ただし「日活プラス」という有料チャンネルが新しく出来て、徐々にそちらに移行しつつある模様。
一連の和田浩治もの(相手役:清水まゆみ)の一本で、『東京騎士隊』をスケールダウンさせたというか地に足のついた作風になっている。
芦川いづみの顔が見えず会話は聞こえるのに壁やらポスターやらをなぜか映し続けるというお遊びがここでも出ているが、『俺たちの血が許さない』でも松原智恵子の顔がなかなか見えない演出があったり、『陽炎座』でも松田優作の顔を映さないショットがあった。
男と女が橋の上で話をする構図が絵になるということを確信的に撮っている清順監督、今回も和田浩治と芦川いづみが陸橋の上で、別のシーンでいづみの父親の鞄を返す場面も小さな橋の上で撮られている。
でもこの二つだけだったかな?
新界組の事務所の2階の階段横に鏡があって、そちらを見ると下の階が見られるという不思議な構造はのちの『野獣の青春』のマジックミラーとかスクリーン裏の事務所を思い出させる。
今回もかわいい清水まゆみだが、ヒロイン役は芦川いづみということであまり出番はない。
オープニングクレジット後のファーストショットは和田と清水がスケートリンクで手を繋いでいる場面ではあるが、文字通り二人の歩幅は合わず彼の方から手放してしまうというところが何か象徴的。
車の解体工場で、帰ろうとする若者と呼び止めるオヤジのシーンで、
「残業しなきゃ間に合わねえじゃねえか」
「専務、労働基準法って知りませんね?じゃっ」
「おれのわけーときにゃ親方に殴られ殴られ仕事を覚えたもんだ。今のわけーやつは…」
こんな会話が60年前の映画ですでに行われているところが面白い。