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網走番外地 北海篇(1965)
網走番外地 北海篇(1965、東映、91分)
●監督:石井輝男
●出演:高倉健、千葉真一、田中邦衛、杉浦直樹、嵐寛寿郎、大原麗子、山本麟一、藤木孝、砂塚秀夫、由利徹、安部徹、小沢栄太郎
『網走番外地』シリーズ第4弾。
今回はしっかり網走刑務所内部からスタートし、色々とひと騒動あったのちに釧路から謎の荷物を運ぶトラックと共に映画は進む。
仮出所を迎えた橘真一(高倉健)は、ムショ仲間の葉山(千葉真一)の保釈金を調達するため、とある運送会社の仕事を引き受けることになる。
王子運送と思いっきりトラックに書いてある。スポンサーなのだろうか。
しょっぱなから軽快なジャズロック風のBGMが鳴っているが、運送会社社長の娘・弓子(大原麗子)がいつの間にか荷台にもぐりこんでいたことが依頼主の安川(安部徹)と金田(藤木孝)にバレるところでその音楽が止まる。
無理やり下ろそうとしても拒否する弓子を橘がとりあえず助手席に乗っけると、彼女がおもむろにラジオをつけ、再び音楽が流れるという演出は決まっていた。
難所といわれる道北の雪深い峠道をオンボロトラックで超えるのは過酷で、脱輪やスタックなどトラブルが続く。
そんな中で謎の男(杉浦直樹)や、骨折した娘を町の病院に連れていく途中の母、心中したが男に逃げられた女など様々な事情を抱えた人々が次々とトラックに乗り込んでくる。
最初はあれだけ弓子に対して降りろと言っていた金田からも、中盤では「どこ行くんだよ。乗ってな」という台詞が出てくるように、だんだんと同乗のよしみのようなものが生まれてくる。
それでもギャングに捕まっているので助けてというメッセージを書いてガムに忍ばせておいたり、強姦未遂にあったりとあくまでもその人間関係の中に緊張感を保つことは怠っていない。
物語の進行とともに、それぞれの人生の背景や生き様が見えてくるという構成なので、途中、葉山の妻を奪った組の組長のところへ殴り込みに行くシーンと、ラストのヘリコプターを駆使した銃撃アクションがなければ台詞劇主体の完全なロードムービーになっていただろう。
杉浦直樹の埋葬シーンは空撮で撮られており、やや曇りがかった真っ白な大地をロングショットで捉えるシーンは、当然周りにスタッフなどおらず演者たちだけが雪の中に取り残されているような感じがして良かった。