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緋牡丹博徒 花札勝負(1969)◆シリーズ3作目◆
緋牡丹博徒 花札勝負(1969、東映、98分)
●監督:加藤泰
●出演:藤純子、若山富三郎、待田京介、清川虹子、小池朝雄、天津敏、嵐寛寿郎、藤山寛美、高倉健
オープニング、犬を追って盲目の少女が線路に入り、汽車が近づく。そこをお竜が助ける。
誰の目線なのか?というくらいの極端なローアングル。
タイトルバックの後、お竜が仁義を切るシーンは正面でなく真横から。
このシーン以外でもお竜がお参りをする場面等々、とにかく人物の顔を真横から映すことが多く、シネマスコープを意識した特徴的な画作りを感じさせる。
舞台は名古屋で熱田神宮の勧進賭博の利権をめぐる争いや、ニセお竜とその娘(冒頭の場面の親子)との交流、敵対する組の子供同士の悲恋(ロミオ&ジュリエットパターン)、そして流れ者の花岡(高倉健)との出逢いと別れ。
様々な要素を過不足も違和感もなく一つのストーリーにまとめ上げている。
お竜がお時を諭す場面などじっとフィックスで丁寧に固めて盛り上げる場面もあれば、西部劇ばりにお竜が馬車に乗って馬を操るアクティブな場面も見られる。
駅舎外での闇夜の中の殺陣もカッコイイ。
お竜と花岡が出会う場面は雨の陸橋の下、道を尋ねる高倉健に傘を貸してあげるシーン。
大げさな演出はないが、傘を渡すシーンでほんのわずかに二人の指が触れる瞬間と、お竜がさっと手を引っ込めるカットが映った後、画面の上を走る汽車の蒸気がモクモクとお竜の背後に流れる。
まるで感情の昂ぶりを表現しているかのよう。
この陸橋下でのシーンは二人の待ち合わせ場所であるかのようにこの後さらに2回登場する。
『緋牡丹博徒』シリーズ、まだ全作観てはいないけど、もっと観ていきたいなと思った。
やや調子っぱずれの「むすめ~♪」がクセになってきた。
「金原さん、任侠人をば制すの看板が泣いとるばい。お取り替えになったらどぎゃんな!」と啖呵を切るシーンがカッコいい。
ラスト、雪の夜、金原組に討ち入りにゆくお竜の姿はまるで歌舞伎の花道のようだった。
今作はお竜が片肌脱いで刺青見せるという場面はないが、エンディングの花岡との別れの場面では前景に牡丹の花(?たぶん)が映されている。
花岡が去った後、うつむき、感情を押し殺したお竜の横顔と、着物の下に隠した任侠の証(緋牡丹)は最後まで隠したまま見せないが、傍らの牡丹を映すことでそこに熱く秘められた、閉じ込められた思いを表現している。
そして三度目にして今度は誰もいないあの陸橋の下に移る。
さまよう野良犬と、汽車の蒸気が切ない未練を残すように悲し気に流れて映画は終わる。
きれいに決まりすぎだろっていうくらい完璧な終わり方です。