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初恋・地獄篇(1968)

初恋・地獄篇(1968、ATG=羽仁プロダクション、108分)
●脚本:寺山修司、羽仁進
●監督:羽仁進
●出演:高橋章夫、石井くに子、満井幸治、福田知子、宮戸美佐子、湯浅実、額村喜美子、木村一郎、浅野春男

寺山修司脚本、羽仁進監督によるATG作品。

DVDの解説リーフレットには「美術 金子國義」と書いてあるが、途中で絵画を映した印象的なカットがあり、それが金子國義の作のようだった。

なのでいわゆる"プロダクションデザイン"としての参加ではない?

ジャケットデザインは寺山作品でおなじみの宇野亜喜良。

父親を亡くした後、別の男と一緒になった母親に捨てられた過去を持つ少年シュン。

ヌードモデルという自らの体を商品として生きる少女ナナミ。

序盤はそんなボーイ・ミーツ・ガール的な幕開けをするが、そこから心象風景を描写するような詩的なタッチとドキュメンタリータッチとが交錯する混沌とした映画。

シュンは笑う会に参加させられ、「キャベツを抜くと芯が出る。玉ねぎを抜くと何が出る」の答え(涙)がわからない。

公園でハトに餌をあげ、幼女と仲良く遊ぶことを楽しみとしていたが変質者扱いされ、催眠療法を受けると養父から性的虐待を受けた過去のトラウマが発露する。

「母のない子」が少女との出会いを通して性的イノセンスへの郷愁と決別を果たす、というテーマが中核にあり、このあたりは寺山的。

"恋のフーガ"とか"函館の女"などの流行歌が流れ、東大合格者へのインタビューや、相槌を録音した寂しい人たちのためのレコード売りなど、当時の都市の風景が合間に挟まれる。

ナナミの友人が撮った『初恋の記録』という映画を学園祭で観た直後、シュンは面白くない顔をしていた。

少年が持っていた拾ったナイフと、少女が持っていた二人で分け合ったガムの銀紙が道に落ちた。

二人はそれも顧みず、笑いながら走った。

きっとその刹那こそが初恋。

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