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つげ義春ワールド ゲンセンカン主人(1993)

つげ義春ワールド ゲンセンカン主人(1993、キノシタ映画、98分)
●原作:つげ義春『李さん一家』、『紅い花』、『ゲンセンカン主人』、『池袋百点会』
●脚本・監督:石井輝男
●出演:佐野史郎、横山あきお、中上ちか、久積絵夢、荻野純一、水木薫、川崎麻世、岡田奈々、杉作J太郎、きたろう

つげ義春の漫画は『ねじ式』を含む短編集を一冊読んだことがあるだけだけど、雰囲気などはかなり良く再現されているのではないかなと思った。

表題作の『ゲンセンカン主人』は構成も台詞もほぼ原作と一緒。確認してないけど他の3作品もそうかもしれない。

原作映像化作品だとオリジナル要素を入れた結果良さを失ったりすることもあるけど、忠実に映像化しさらにそれが面白いという理想的な完成形だと思う。

映画のつくりとしてはつげ義春の描いた漫画を出版社の編集部員たちが漫画のページをめくって各ストーリーが始まるという、石井輝男監督『徳川女刑罰史』を彷彿とさせるオムニバス構成。テロップなどで明確に分断する編集はされていない。

作品のチョイスも良く、『ゲンセンカン主人』で終わっていたら悪夢的でシュールな世界観で映画全体が包まれていたところ、『池袋百点会』で締めることで侘しいユーモアと淡いペーソスで何とも言えない気持ちで見終えることができる。

紅い花』の、まさに地獄のように鮮やかな紅い花が川縁に点在する光景と、腹の痛みでうずくまる白い浴衣の少女の姿が鮮烈に映る。

ゲンセンカン主人』は原作通りなので全てが完璧という感じだが、混浴場面での吹き戻しの笛と天狗の面をメタファーとして強調していて良かった。ロケ地選定しかり、セットも本当によくできている。

池袋百点会』に関しては、佐野史郎の"所在なさげに突っ立つ"演技がうますぎる。墓場の前で踊る岡田奈々が素敵で良かった。

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