コッホ先生と僕らの革命(2011🇩🇪)
原題: DER GANZ GROßE TRAUM(2011、ドイツ、114分)
●監督:セバスチャン・グロブラー
●出演:ダニエル・ブリュール、ブルクハルト・クラウスナー、ユストゥス・フォン・ドナーニー、カトリン・フォン・シュタインブルク、トマス・ティーマ、テオ・トレブス、アドリアン・ムーア、ティル・ヴァレンティン・ヴィンター、ユルゲン・トンケル、アクセル・プラール、ヘンリエッテ・コンフリウス
ユーロ2024開幕に乗っかってヨーロッパ映画を観ていこうシリーズ。
サッカー映画限定というわけではないですが、開催国のドイツからスタート。
イギリス留学から帰ってきた教師コッホがギムナジウムの生徒たちに英語とサッカーを教えようとするも、生徒や学校の役員たちからのサッカー(=大英帝国の文化)への反発にあいながらも徐々に子供たちの心を掴んでいく、というストーリーで1874年のブラウンシュヴァイクが舞台。
脚本は変にひねくれたところもなくまっすぐに人の心を打つドラマ作として上手く作られている。
主演のダニエル・ブリュール自身もバルセロナファンということでリフティングを始めなかなかなサッカーテクニックを随所で見せる。
デブ少年にキーパーをやらせるというのはベタなところだが、彼が皮革工場の息子ということでメディシンボールの応用としてサッカーボールを作らせたり、皮のキーパーグローブをしてたりってところが設定を活かしていて面白かった。
上流階級だらけのクラスにおいて唯一労働者階級の少年、ボーンシュテットもなかなかうまい。
体育館でのフリーキックも相当壁の近いところから直接決めているし、試合ではキックフェイントでのゴールを見せる。
この当時のサッカー事情はよくわからないが、生徒たちのするサッカーは基本ショートパス主体で、ロングボールは使わず既にイングランド流とは離れているのが興味深かった。
学校でのサッカーが禁止された後、広場でやっているシーンで見張り役の女の子が口笛拭くとみんなで一斉にスクワットをし始めるのが面白い。
級長で最後までコッホに反発していたフェリックスだが、女の子に「あなたはやらないの?」と聞かれようやく仲間に加わることになる。
別にサッカーに魅力を感じたのでなくカッコいいところ見せたいために始めるというあたりがリアルで良い。
サッカーはチームプレーとフェアプレーが大切という、精神性の部分も生徒たちに教えるコッホ先生はとても素晴らしいなと思った。
ただ役員たちから見たらコッホは相当な異分子だろうなあ。
ドイツナショナリズムに反し、しきりに「保守的でガンコなドイツ人」を批判する。
校内の規則も厳しく労働者階級を見下しているし排他的で封建的なところはあるが、正直そこまで後援会長や牧師たちが悪者には思えなかったのでコッホがかなり過激で浮いた人物として見えすぎてるかなという気もした。
出てくるドイツ人の大人たちは典型的ドイツ人という性格で描かれているのに対して、コッホってイギリス人だったっけ?って途中で思ってしまうほどドイツ人っぽさが希薄(留学していたからということなのだろうが)なのでそこの背景をもっと強調してほしかったかなと思う。