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トラック野郎 度胸一番星(1977)

トラック野郎 度胸一番星(1977、東映、100分)
●監督:鈴木則文
●出演:菅原文太、愛川欽也、片平なぎさ、八代亜紀、千葉真一

トラック野郎シリーズ5作目で、山形~新潟が舞台。

お決まりの検問突破から始まるが、追いかける婦警は若い頃のあき竹城。

過去の作品ではトラックの風圧でスカートがめくれる、みたいなシーンがあったような気がするがそれはまだ理解できる。

今回はトラックであき竹城の横を追い越していく際に車体に制服が引っかかって脱げ、なぜかそのまま上半身裸になってしまう。

トラックが横切ると服が破れるのではなく脱げるという物理法則が働く世界観、それが『トラック野郎』。

ドライブインで出会った美女(桃次郎はジャリパンと呼んでいたが)のことが忘れられないジョナサンが、青果市場で積荷を運びながら「かぼちゃばっか食っててみろ!たまにはメロンやイチゴも食いてえじゃねえか!」と言うシーンがある。

この台詞を言う時にタイミングよくかぼちゃ、メロン、イチゴの箱を持った人が通りすぎてゆく。

技巧的とも言えるし、ここは青果市場なんだからむしろそれら野菜の箱を横目にしたから自然に出たコメントとも解釈できるのでギャグにしてはやたら洒落た演出だなと思った。

曽地峠で出会った美人幽霊(片平なぎさ)に招かれるように、桃次郎は三島由紀夫『サド侯爵夫人』を傍らに新潟・佐渡へ。

そこで美人幽霊と瓜二つの美しい女性教師(片平なぎさ)と運命の出会いを果たすが、最初に交わした会話が「水名子先生ですか。美しいお名前だなあ。もちろん独身ですね?

初対面でいきなり聞くことか!?(笑)

春日崎、尖閣湾など佐渡の観光名所をテロップ表示とともにまわっていく演出で、一種の紀行映画的な役割もあったのだろうと想像できる。

水名子が芭蕉の「荒海や佐渡に横たふ天の河」だとか、「ふるさとは遠きにありて思うもの」という室生犀星の一節を諳んずる場面があり、合間に文学の香りを漂わせてくれるところがこのシリーズのよいところ。

そして桃次郎が"天の河"を相撲取りのしこ名と、室生犀星を都はるみの歌と勘違いするところまでがセット。

捨て子の過去を持つ水名子と、住む家を持たない桃次郎、さらにはライバルとして出てくるジョーズ(千葉真一)もただの無法者でなく、故郷の村が原発予定地に買収された過去を持つ人物ということで、「ふるさと」のない者たちの織り成すストーリーとなっている。

そんな桃次郎、なじみのトルコ風呂(その名もふるさと(!))にて、速達で届いた水名子の手紙を読み、思いを馳せながらもトルコ嬢とヤるという、プラトニックと性欲が分裂する男の悲しき性。

そこに「桃次郎さん、今どこで何をしているのでしょうか」という物憂げな水名子のモノローグが重なる爆笑のシーン。

そしてなぜソープランドに手紙が届いたのか、それは謎。

金沢の兼六園や、白根大凧祭り、新潟祭りを挟んで映画は終盤へ。ちなみに『トラック野郎』シリーズは夏休みと正月交互に上映されていたので奇数作は祭りなどの夏の行事、偶数作では大晦日などの年の瀬の風景が描かれている。

女トラック乗りを演じた八代亜紀の歌唱シーンもあり、とにかく娯楽映画として完成度が高い。

終盤、桃次郎が水名子に思いを告げる重要な場面。

男らしさの権化みたいな桃次郎(=菅原文太)が、振られるのが怖くて、まるで初恋をした女子中学生みたいにジョナサンに代わりに気持ちを聞きに行ってもらうところが描かれている。

この後の定石破りのギャグの前振りの意味もあるにしても、好きな人を前にして弱気になる男の純情さと情けなさをしっかりと描いているところが良い。

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