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不良姐御伝 猪の鹿お蝶(1973)
不良姐御伝 猪の鹿お蝶(1973、東映、88分)
●脚本・監督:鈴木則文
●出演:池玲子、成瀬正孝、衣麻遼子、早乙女りえ、三原葉子、一の瀬レナ、丘ナオミ、碧川ジュン、根岸明美、林真一郎、岡八郎、大泉滉、堀陽子、内田勝正、マイク・ダーニン、河津清三郎、殿山泰司、遠藤辰雄、名和宏、クリスチーナ・リンドバーグ
鈴木則文監督、池玲子主演によるピンキー・バイオレンスの名作。Amazonの東映オンデマンドの他、U-NEXTでも視聴可能。
「明治十九年(1886)東京」というやけにバカでかい字幕からスタート。
赤い千本鳥居を歩く七五三帰りの晴れ着の少女と老父。
刺客に襲われ、血まみれの中で懐から落ちた花札を三枚摘んで絶命する父親を眺める少女。
そして花札の襖を背景に池玲子がポーズを決めるタイトルバックがかっこいい。(ちゃんと猪鹿蝶ができている)
父親の手にした猪鹿蝶の花札から、その刺青をした者たちが犯人だというダイイングメッセージがなぜ成立したのかは謎ですが、二十年後大人となったお蝶は復讐のため犯人を追う。
クリスチーナ・リンドバーグのモノローグシーンがやたら長くて主人公は誰だっけ?となったりストーリー展開はツッコミどころも当然ありますが、視覚的インパクトは冒頭のタイトルバックもそうだけど、凄いものがあります。
まずは池玲子の雪の中の全裸での殺陣の場面。
一連の動きがスローモーションとなり、奪った長ドスで男たちを切りまくる。
せっかくの裸なのに足元を映しているシーンが入ったと思ったらベタな効果音の後に切った相手の腕がボトリ。
料亭のステンドグラスも印象的だし、岩倉建設の社長がゆきの処女を奪う場面も畳が緑、赤、黄となぜかカラフル。
パノラマ館での妖しいアングラ感、黒川の屋敷の襖にも蛇、極めつけは地下牢に磔のキリストのステンドグラス。なんじゃこりゃ!?
中盤でお蝶と岩倉の濡れ場で「香水塗らせて」と襖の陰で全身に砒素を塗りたくるシーンは無音になり、妙な緊張感の中見てはいけないものを覗き見しているような感覚になる。
黒川の屋敷でクリスチーナと女中が裸で抱き合ってるのを見て興奮するオッサンとか『卍』?『鍵』?谷崎かな?と思ったら、その直後のクリスチーナの修之助への告白を聞いてたらそれはまんま『舞姫』だった。
他にも列車の中のシスター軍団とか、ラストの花札を踏みながらの花道退場とかストーリーと関係ない部分の予定調和無視の美術、ビジュアル面でもうおなか一杯で最高。