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徳川女刑罰史(1968)
徳川女刑罰史(1968、東映、96分)
●監督:石井輝男
●出演:吉田輝雄、渡辺文雄、中村錦司、橘ますみ、上田吉二郎、芦屋雁之助、賀川雪絵、尾花ミキ、白石奈緒美、沢たまき、小池朝雄、由利徹
いきなり首切り、胴体切断、火あぶり、股裂きと残虐極まりない処刑場面を先制パンチでタイトルバックが始まる。
芸術なんかじゃないよ見世物小屋だよ、でもやるからには中途半端じゃなくって全力でやるよっていう石井監督からの犯行声明だ。
映画は三話構成のオムニバス形式。
第一話の主役、橘ますみ演じるみつは全裸になって水浴びでの登場。
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これから始まる残酷描写の前の一服の清涼剤的サービスでもありつつ、あの初登場時の恥じらいのある水浴び裸シーンは何だったの?と思わせるための丁寧な前フリ・お膳立てでありつつ、さらには最後のみつの運命も暗示している上手い演出。
すなわち、初登場では水浴び、旦那に犯された夜は雨降り、拷問での水責め、最期は水磔だったりと終始水と関連付けられているという運命だ。
中段の拷問場面で天井から海老反りで吊るされ十字架に逆さで磔にされとひどい目に遭わされており、終始薄幸で可憐なキャラクターに設定されている橘ますみの肢体を見つめる観客も自動的に共犯関係にさせられてしまう。
第二話は尼寺が舞台。
最も性から遠い尼や僧侶たちの巻き起こす愛欲の事件。
野外で事に及ぶシーンで丁寧にユリの花のドアップを映すあたりがさすがという感じである。
僧侶と肉体関係を結んだことによる拷問は、処刑人が行うよりも尼が行うことで嫉妬も入ってると読み取らせることが可能になり、より苛烈さを印象づける。
ドジョウ責めやら辛子責めやらキツイのかなんなのかわからないが尊厳を踏みにじる上では効果的な拷問が続くが、ここでまたしても首チョンパ!
信心深いがゆえの原義通りの確信犯的冷静さが垣間見えるところがさらに恐ろしさを増しています。
第三話は彫師が理想の肌を持つ女を探す話で、そこに描く苦悶の表情を見たいがために罪人の女たちの拷問場面を見学させてもらうという、谷崎の『刺青』と芥川の『地獄変』を合わせたようなストーリー。
改めて思うが、女湯覗きシーンに若い女性しかいないというのは不自然だけど映像表現における絶対的な不文律だよな、ということ。
後、気絶させるために腹にパンチ食らわせてガクッていうのはまあ分かるとして、結構な時間経ってるけどそんなにも起きないかな!?っていうところは勇気を出して突っ込んでおきたい。
この後の阿鼻叫喚の女だらけの拷問大会が最大の見せ場。