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素ッ裸の年令(1959)

素ッ裸の年令(1959、日活、54分)
●監督:鈴木清順
●出演:赤木圭一郎、堀恭子、左卜全、広岡三栄子、初井言栄、高原駿雄、藤巻三郎、小沢真好、仙頭哲、清水義之、嶋田蓉子、久世晴美、呉麗香、清水秀一、鈴木三右衛門、波多野憲、玉村駿太郎、雪丘恵介、青木富夫、久松晃、紅沢葉子、原恵子、高田栄子、角田真喜子、榎木兵衛、林茂朗、古田祥、緑川宏

ブルーレイで観てみたシリーズ。

序盤のバイクの疾走シーンなど、ワイド画面を活かした引きの画とアップとの繋ぎがテンポよくスピードと迫力に満ちた良い出だし。

赤木圭一郎の初主演作としても知られる作品。

不良少年の赤木演じる健が居場所のない少年少女たちをカマボコ兵舎に集め、理想郷的な暮らしをするも成長への過程の中で崩壊していくというようなストーリー。

主人公は健ではなく、少年の一人サブと見た方がいいかもしれない。

そんな「別荘」において食事中に二人の少年が喧嘩をしだすと「外でやれ」と健。

二人の少年に続いてもう一人眼鏡の少年がついていくが、何故か外に出ていったその眼鏡少年とまだ中にいるはずの健が空間を飛び越えて会話をするという奇妙な場面がある。

注意深く見れば、一応健の席の後ろに出入口があり、その出た辺りに眼鏡少年が腰掛けてるので無理ではなさそうだが。

メインの少年サブの回想シーンは合成が使われていて目を引くが、何故か学校の屋上の背後に風船が飛ぶシーンがあるがこれの意図は謎。

『自選DVD-BOX』の特典のオーディオコメンタリー(ブルーレイボックスの方には未収録)でも聞かれていたが相変わらず清順監督は覚えてないのかはぐらかしているのか、答えはわからなかった。

後半の方でサブが補導され、家に連れられてきたシーンでもなぜか一瞬の屋根のシーンが映り、また家の中に戻る。ここのカット割りも当然、謎。

そんなサブの父親が内職をしているのは映画のポスター作りだった。

左卜全演じる浮浪者とサブが触れ合う場面でのホリゾントの夕焼けの丘の場面もとても幻想的で良い。

監督の感覚では高級犬というよりも流行っていたからということらしいが、浮浪者がスピッツを連れているわけがないと会社から怒られ、スピッツとわかるシーンはカットされたらしい。

そのせいか、ロングの画ではスピッツと分かるが、逆に言えばその犬が決して寄りの画では映らないので不自然と言えば不自然な印象を受ける。

終盤別荘で、健と恋人が深刻な話をするシーンではサッとカーテンを閉めて「ハイティーン」と「ローティーン」たちとの間に境界線を作る。

健と少年たちの最初のシーンは川の堰の階段状になっているところ、下流の方で行われている少年たちの決闘を、一番高い場所で健が見ているという構図。

ラストは崖の上と下で、少年たちと健の位置が逆転した構図となっている。

短い作品であるが色々と面白い要素が詰まっていて見ごたえがあった。

音声解説には編集の鈴木晄も参加していたが、鈴木組はフィルムを消費しすぎて始末書をよく書かされたとか、斎藤武市や中平康は優秀で社内で表彰されていたという話をしていた。

清順監督の作風が大きく変わったのはいつ頃かという話題になった時、定説とされる『野獣の青春』の頃ではなく、清太郎から清順に名前を変えた『暗黒街の美女』から変わったという証言は興味深かった。

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