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肉体の門(1964)
肉体の門(1964、日活、90分)
●原作:田村泰次郎
●監督:鈴木清順
●出演:宍戸錠、和田浩治、野川由美子、石井富子、松尾嘉代、河西都子、富永美沙子、玉川伊佐男、チコ・ローランド、江角英明、長弘、野呂圭介
鈴木清順監督の日活時代の配信はほぼアマゾンプライムの専売特許状態だが、なぜかこの『肉体の門』だけU-NEXTでも配信されている。
映画は野川由美子が不安げに夜の街を駆ける横顔から始まる。
クレジットでは宍戸錠が最初だが、主役は野川由美子をはじめとする4人の女たちと言って間違いない。
集団で警察にパクられる娼婦たちと、駐留軍の施設から物資を盗み逃亡する男たちを順番に撮っていく。
この場面は微妙なスローモーションで映される。
マヤ(野川由美子)がおせん(河西郁子)という赤い服の娼婦に救われ、おなじパン助グループに加わることになるシーン、「男と寝たことある?」の台詞の直後に星条旗へのショット。
かつてマヤが強姦され、黒人牧師に助けられたシーンがフラッシュバックするが感傷的に過去を回想すると言うほどの悲壮感のようなものはなく瞬時に次の場面に移り、もう全身緑のド派手な服装になっている。
おせんは赤、マヤは緑、お六(石井富子)は黄色、お美乃(松尾嘉代)は紫と4人の娼婦たちはみな原色のド派手な格好をしているのが特徴的。
この女の園に転がり込むようにやってきた負傷した復員兵・後の愛称シンちゃん(宍戸錠)が現れ、パワーバランスがだんだんとおかしくなってくるところでストーリーは動いていくが、女たちが順々に心情を吐露するシーンではバックがそれぞれの色に変わる舞台的演出となっている。
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金をとらずに男と寝るという、掟破りを行った仲間の一人をリンチする場面では見かねたシンちゃんが「いい加減放してやれよ」と言った直後に「りんごの唄」を4人背中合わせに歌う場面を360度パンでぐるっと映す。
リンチの凄惨さと若い娘らしい奔放で無邪気な感じの対比が一瞬にして行われる。
この辺の過程を省略する編集のリズム感とスピーディーさがいかにも清順映画という感じで、良い。
シンちゃんがマヤを抱く直前に爆撃のショットとか、様々なイメージショットが効果的に挟まれているのも面白い。
主演の野川由美子は映画デビュー作だったようだが堂々と演じていて、足をあけっぴろげに開いても裸さらけ出していても可愛くて、凛々しくて、美しい。