恐怖女子高校 暴行リンチ教室(1973)
恐怖女子高校 暴行リンチ教室(1973、東映、88分)
●監督:鈴木則文
●出演:杉本美樹、佐分利聖子、叶優子、太田美鈴、衣麻遼子、早乙女りえ、一の瀬レナ、碧川ジュン、三原葉子、近藤宏、城恵美、小島三児、田中小実昌、北村英三、須藤リカ、水沢夕子、山川貴子、穂積かや、橋本房枝、中川三枝子、浅野由紀子、中村錦司、蓑和田良太、奈辺悟、森谷譲、前川良三、波多野博、疋田泰盛、畠山麦、鈴木康弘、金子信雄、名和宏、今井健二、池玲子、渡瀬恒彦
東映マークに叫び声を被せて幕を開ける「恐怖女子高校シリーズ」の2作目。
いきなり「風紀委員」の腕章を巻いた女学生たちが血を抜くリンチを行うというえげつない始まり方。
しかし皆赤いマスクと赤い手袋してる辺りが実に映像的というか、スタイリッシュ。
警察が来てリンチによる転落死も事故としてもみ消すシーンの直後、校門を閉めたと同時にタイトルがドーンと出る。
舞台は「スケバンの墓場」と言われる希望学園。
前作以上にファンタジーっていうか、そうとう振り切った作品。
俗悪に染まり切った学校の経営陣の下働きをする親衛隊みたいな「風紀委員」はもちろん、主役側の3人のスケバンたちもぶっ飛んでいる。
学園もので演じる役者の実年齢についてなんて野暮なことは言いたくないが、風紀委員長の衣麻遼子とか、なぜかガンマン風ファッションの太田美鈴とか、凄味ありすぎてコスプレとしても成立してないというか。
主演の杉本美樹と池玲子が仁義切り合うのはまあもういいとして、車やらバイクを簡単に乗り回すのはどうかと(まあ前作ではショットガンぶっ放してたのでそれよりはまだマシか…)
でも序盤の、風呂場でのセックスチェックのシーンのあたりで、毒々しい色した甘い砂糖菓子を無理やりに口に詰め込まれているような、もう画面を見てるだけなのに胃もたれしそうになって、一旦観るのやめようかなと本当に思った。
風紀委員の一人を演じる叶優子は、現代の基準で見ても十分かわいい(トップ画像右)。
佐分利聖子とのトイレでのレズシーンが一番エロかった。
―「サツに名乗るような名前持ち合わせちゃいねえよ。知りたかったらネリカンにでも問い合わせて聞いてみな」
―「あんたが新宿スケバン同盟が最後まで手を出せなかったっていう、十字架番長?」
―「そうさ、私がハマの十字架番長」
―「桜の代紋背負ってるからってでけえツラすんじゃねえよ!」
―「何が風紀委員でい。しょせんポリ公や先公の力借りねえと何もできやしねえじゃねえか」
……………、といった迷台詞の数々。
ヤクザ映画でなら成立するような台詞や世界観をそっくりそのまま女子校という異世界に落とし込んでしまった結果、いわゆる二人の男女の心が互いに入れ替わる系の作品があるが、「ヤクザ映画と女学園映画の持つ魂が入れ替わってしまった」映画として見ると納得できる。
しかし、ハニートラップによる淫行発覚した校長が追放される場面での生徒たちの“仰げば尊し”はヤクザ映画を換骨奪胎しただけじゃ作れないシーンだと思う。ここは監督のセンス!
ただ、そのように解釈しようとすればするほどトップ屋役の渡瀬恒彦が浮いてしまうというか、そこまで本筋に関係してくる役である必要がないような気がする。ラストまで出てくるのも違和感がある。
渡瀬恒彦にとってキャリアアップになるような作品でもないだろうし…謎。
カメラワークは基本まっすぐで静止しているような場面は少なく、やたら斜めのアングルが多い。
まじめにかしこまって見るようなもんじゃないよ、という監督からのメッセージか。
キャットファイトのような見世物的エロ映画的ムードから、最後にはしっかり体制批判、学生運動的な文脈に収めてしまうあたりの力技が凄い。
それが成立するのも金子信雄、名和広といったオヤジ俳優たちの存在感が大きいのは当然だし、それに張り合う無名の若手女優たちのガッツも感じさせる。
この当時にメイキングという概念があったとしたら、絶対に見てみたいなと思った。