恋愛エッセイ : 自分が1番だと思っている恋愛が自分の1番の恋愛だとは限らない

歳を取ると若い頃とは考え方が違って来ることがある。若い頃というのは、自分が好きな人が1番大切だと思う。それは今も変わらないのだが、歳を取ると自分を好きでいてくれる人も同じくらい大切だと思うようになる。

これは恋人、パートナー、異性に限ったことではない。自分を可愛がってくれた伯母、あるいは自分を本当の兄のように慕ってくれた後輩もだ。
学生時代を思い出すと、先輩というのはよく覚えているが、後輩というのは余り覚えていない。
だが、自分を慕ってくれた後輩たちが男女問わずいたことを最近よく思い出す。

恋愛にしても同じで、自分が好きだった人はよく覚えている。
だが歳を取ってから、例えば中学の時に、顔を赤くして、一緒に映画を見に行ってください、と言ってくれた女の子も同じくらい思い出す。
歳を取るということは、そういうことかもしれないと最近思うようになって来た。

自分が1番好きな人が1番大切で、自分が1番好きな人との恋愛が自分の1番の恋愛だと思っている場合が多いと思う。だが、本当にそれが1番の恋愛なのか、あるいは、だったのかは、何処かの時点で、心を落ち着かせて考えてみる必要があると思う。

自分が1番だと思っている恋愛は、その人が1番好きだった、というだけなのかもしれない。
その人ほど好きではなかったかもしれないが、幸せな恋愛をした人が他にいるかもしれない。
他の人から見れば、自分は1番好きだった人に熱を上げていただけで、どうしてあんなに優しい恋人と別れたのだろう、どうして大切だと思っていないのだろうと思えるかもしれない。

自分が好きな人と結婚するのが幸せか、
自分を愛してくれている人と結婚するのが幸せか、
という論議は昭和の時代からある永遠のテーマのひとつかもしれない。
どちらを選ぶかは、その人の考え方、価値観、あるいは人生観による。

還暦を過ぎた僕は
自分を愛してくれている人と結婚するのが幸せ
だと思うようになって来た。






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