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食品開発におけるNB(ナショナルブランド)とPB(プライベートブランド)の違いとは?
食品業界において、NB(ナショナルブランド)とPB(プライベートブランド)は、それぞれ異なる戦略と目的を持っています。消費者の購買行動の変化や市場環境の変化に伴い、PBの存在感が増しています。本記事では、NBとPBの違い、PBの成長背景、そして今後の展望について解説します。
1. NB、PBとは
1-1. NB(ナショナルブランド)とは
NBとは、メーカーが開発・生産し、自社のブランド名で販売する商品を指します。代表的な例として、味の素、明治、日清食品といった大手食品メーカーの商品があります。
NBの特徴
- 研究開発力を活かした独自性のある商品が多い
- 広告・販促活動が活発でブランド力が強い
- 消費者からの認知度が高く、信頼性がある
- 価格帯は(PBと比べると)高めであることが多い
1-2. PB(プライベートブランド)とは?
PBは、小売業者(スーパー、コンビニ、ドラッグストアなど)が企画・販売するブランド商品です。実際の生産は食品メーカーが請け負うことが一般的です。代表例として、セブンプレミアム(セブン-イレブン)、トップバリュ(イオン)などがあります。
PBの特徴
- 小売業者の独自企画による商品展開が可能
- 広告費を抑え、比較的低価格で販売されることが多い
- 小売業者が直接管理するため、店頭での販売戦略を調整しやすい
- NBに比べてブランドの知名度は低いが、価格と品質のバランスが取れている
2. なぜPBが増えているのか?
近年、PB商品のシェアが拡大しています。その背景には、以下のような要因があります。
2-1. 消費者の節約志向の高まり
近年、物価の上昇や経済の不透明感から、消費者はよりコストパフォーマンスの良い商品を求める傾向にあります。PBは、NBよりも低価格で販売されることが多いため、節約志向の消費者に支持されています。
2-2. 小売業者の収益構造の変化
小売業者にとって、PB商品の展開は利益率の向上につながります。NB商品を販売する場合、メーカーに支払う仕入れコストが発生しますが、PBではそのコストを抑え、より高い利益を確保できる可能性があります。
2-3. 品質向上による信頼獲得
かつては「PB=低価格=低品質」というイメージがありましたが、近年では品質の向上が進んでいます。大手メーカーがPBの製造を請け負うことも増え、NBと同等の品質を持つPB商品も増加しています。
2-4. 小売業者のブランド戦略
大手スーパーやコンビニは、PBを独自のブランド戦略として活用し、他社との差別化を図っています。たとえば、セブンプレミアムは「ちょっといいもの」をコンセプトに、NB商品に匹敵する品質の商品を展開しています。
3. NBとPBの違い
店頭に並んでしまえば、お客様には「ブランド」と「価格」くらいしか違いは分からないと思いますが、実は作ってる立場からすると結構違いがあります。
こういう話は、現役で食品会社に勤務されてる方はなかなか話しにくいと思いますので(笑)、自由気ままな私がお話ししたいと思います。
(業種によって仕組みは異なると思いますので、あくまで1事例としてご参考ください。)
3-1. NBの生産体制
NBは自社工場を持っていたり、製造のみを行っている委託工場で生産されます。
自社工場を持っている場合、工場の「稼働率」と言う、工場が動いている時間がとても重要な指標になります。稼働率が上がると、単位時間あたりの生産コストが安くなるからです。
この稼働率が常に100%であることが、1番良い状態とされます。
もし思うように商品が売れなかったりすると、在庫がダブつき稼働率が下がってしまいます。
3-2. PBの生産
一方、PBは自社工場を持たないので、商品は全て委託工場で生産します。
この委託生産は、NBも委託するような工場に委託する場合もあれば、NBの自社工場へ委託する場合もあります。
NB自社工場も、稼働率が上がるなら生産を受けてもいいかなと言うことになります。
3-3. 委託されるのは生産だけ?
PBは、マーケティング部門はあっても開発部門(処方設計、試作等をする部門)は持っていないところがほとんどです。
なので、「お宅の工場に生産委託して稼働率上げてあげるし、出来上がったものは全部引き取るから、開発もやってよ」となります。
なので、処方設計や試作などをNBの開発部門がやって、PBのマーケティング部門が評価する、という流れになります。
3-4. 処方設計での違い
NB開発部門には過去何十年という処方の知見がありますので、PBが望む処方はだいたい作れます。
ただ、問題は原料コスト。
NBは自社の独自基準を持って原料選定を行なっていますが、PBになるとそれが適応されなくなる場合があります。
コストが優先される場合です。
なので、コスト合わせるために原料の品質を下げ、それを香料などで誤魔化す処方を組むことになります。
(もちろん、基本的な国の法規は遵守する原料です。あくまでNBの自社基準には合致しない原料を選ぶこともある、という話です。)
正直、NB側の開発者からすると「この味だとダメなのでは…」と思うこともありますが、あくまで判断するのはPB側。
なので、OKが出るとその処方で決まります。
3-5. 売り場を持ってるPBの方が立場は強い
どこの業界も同じ気がしますが、ブランド持ってるメーカーよりも、売り場を持ってる小売の方が立場は強いです。
私が昔々に先輩に聞いた話では、
ある小売からPBの委託依頼をもらった。
PBを生産してくれたら、うち(NB)の商品も棚に置いてあげると言われたら
↓
当時はPBを受けた経験がなく社内も懐疑的だったが、自社商品が棚に並ぶならと受けてみることにした
↓
蓋を開けてみれば、棚に並んだのはPBのみで、NBは置いてもらえなかった
ということもあったそうで。
メーカー(NB)も強力なブランドを持っていないと、「作っても売るところがない」となればお客様には届きません。
とはいえ、NBは「こだわりすぎて過剰品質」みたいな場合もあると思うので、お客様がPBとNBを選べる売り場が望ましいのかなと、個人的には思います。
4. NBとPBの今後の展望
4-1. NBの戦略
NBメーカーは、PBの拡大による市場競争の激化に対応するため、以下のような戦略を取る必要があります。
独自性のある商品開発:NBならではの技術力を活かし、PBでは提供できない価値を生み出す。
ブランド力の強化:広告・SNSマーケティングを活用し、ブランドの認知度とファンを増やす。
PBとの協業:一部のNBメーカーは、小売業者と協力してPB商品の開発を請け負い、新たな収益源とする動きも見られる。
4-2. PBの戦略
PBは今後も拡大が予想されますが、単なる低価格戦略だけではなく、さらなる付加価値を持たせる方向に進化しています。
プレミアムPBの拡充:低価格帯だけでなく、高品質なPB商品を展開し、NBとの差別化を図る。
エコ・サステナブル商品の開発:環境配慮型のPB商品を増やし、消費者の意識の変化に対応する。
健康志向の強化:糖質オフ・高たんぱくなど、健康を意識したPB商品の開発が進んでいる。
5. まとめ
NBとPBはそれぞれ異なる特徴を持ち、食品市場において重要な役割を担っています。消費者の嗜好や市場環境の変化に応じて、PBの存在感は今後も高まると予想されますが、NBも独自の強みを活かして競争力を維持する必要があります。
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