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『絵本児童書の類』へのお返事の記事

以前、きつねの登場する絵本をご紹介する記事を書いたのですが、相互のひろうすさんが関連する書籍をご紹介する記事を書いて下さいました

書籍を拝見したら、さすがひろうすさんのご紹介だけあってどちらも大変面白く、自分ちでも感想をまとめてみました
おかえしのおかえし、みたいな記事ですが、絵本児童書の名著をご覧頂ければ嬉しいです!
そして、ひろうすさん! ご紹介と記事執筆をいつかは、ありがとうございました!


『こぎつねコンとこだぬきポン』

松野正子・作 二俣英五郎・画

きつねの登場する絵本を探していると、その中でたぬきと共演している作品を見かけることがあります
きつねとたぬきは基本は好敵手で、ばけくらべをしていたり、矜持のぶつかり合いをしていたりと、負けられない、引き下がれない相手同士なのが、ふたつの種族の定番なんだろうな…と思いつつ、一方で、きつねとたぬきが屈託なく仲良くしてる話ってあるのかなと、何とはなしに感じていました
ですので、ひろうすさんのご紹介でこちらを読めた時は、すごい嬉しかったです!
めっちゃいいお話なんですよ~( ;∀;)
こぎつねのコンとこだぬきのポンが、どうしても仲良くなりたい、友だちになりたい! ってめちゃくちゃ頑張っちゃうお話なんです、素敵なんです!
挿絵はちょっと鳥獣戯画を連想させる、毛筆のタッチなのですが、きつねもたぬきも頭身がちっちゃめでかわいいです
山奥の小さな集落、それこそ自分のうちの家族しか暮らしていない境遇だった、こぎつねのコンと、こだぬきのポンは、嵐の日に倒れた大木が渡し橋となって、それぞれの山が結ばれ、一緒に遊ぶ友だちになります

しかし、きつねの一家でもたぬきの一家でも、先祖以来の旧怨により、お互いは恐ろしく悪どい生き物なのだ! という偏見に凝り固まったままで

「きつねと遊ぶなんてとんでもない!」
「たぬきと遊ぶなんてゆるさないぞ!」

と、お互いに会うのを禁じられてしまうのです
でもコンとポンは一緒に遊ぶ友達が欲しいもの同士、手を取り合って、たくさん遊ぶ友達になっちゃいます
ある日、お互いの姿に化けっこして遊んでいたら、親ごさんが迎えに来てしまって、コンはポンの姿でポンの家に、ポンはコンの姿でコンの家に、帰ることになってしまいました
果たしてふたりの運命はいかに…?

という、あくまでもほのぼのと可愛い話ですが、その中で懸命に頑張る、ポンとコンの優しさや強さ、そして一貫して鏡あわせのように展開される、きつねとたぬきの一家のお話に、きっと仲良くなれるよ、大丈夫だよ! と安心して読んでいられるんです
そして、仲良くなれた後に交わされるそれぞれの親ごさんたちの言葉に、たいへん涙腺にきてしまうんです、傑作なのです!
細かい話ですが、コンはふんわりしたしっぽ、ポンはぽってりしたしっぽをしているそうです
コンとポンがそれぞれのおうちで風邪をひかないように、親御さんたちがしっぽをそっと布団の中に入れてあげるシーンで、絶対仲良くなれるよ! ってほっこりしちゃうんですよね

この書籍のフォア文庫は、一冊の絵本くらいのボリュームの作品が三編収録されている作品なので、他二作の感想も追記します

『いのししイノコ』
ある日、りっぱなおムコさんと結婚して可愛いうりんぼうをいっぱい産んで、素敵なお母さんになろう! と決意して、お婿探しをフゴフゴと頑張るいのししのイノコさんのお話です
途中、ほっそりとした優美な脚の鹿のカノコさん、美しくしなやかな手の猿のサルコさん、毛並みが艶やかな狐のキネコさんと出会い、自分はほっそりした脚も、しなやかな手も、艶やかな毛並みも持ってない…と打ちひしがれてるところに、一頭のりっぱなオスいのししが現れたのでした…というお話ですが、女の子がお婿を探しに行くお話って、地味に珍しい気がします しかも猪女子です、わくわくします
いのししのお婿さんはさすがの精悍な男前のビジュアルで、登場した瞬間にイケメンお婿さん来た! っていう説得力があるしイノコさんも明らかに一目惚れをしている絵で、そして彼のためにめっちゃ頑張って、無事に彼からの求婚を受けることができた、というこちらも幸せなめでたしめでたしで終わる、いいお話です
冒頭で決意した夢を、見事に叶えた結末の挿絵、とっても可愛いです
ところで、鹿のカノコさんは作画的にすごく麗しく、伏し目がちの睫毛が愛らしい鹿さんでしたが、猿のサルコさんは何というか普通の生き生きとした猿で、狐のキネコさんは挿絵がなかったので、なぜそこで挿絵格差があんのやと気になりました キネコさんも見たいですよ、きつね推しにも光を下さいな
(絵本版にはあるのかな?)

『まめたとまめきちの話』
前作二話は、あくまでも動物の世界の話ですが、なんとこの作品は、人間が登場する物語です
そんなに化けるのが達者ではない、たぬきのきょうだいのまめたとまめきちは、ある日人間の子供たちが神社で遊んでいる姿を見て、人間に化けて一緒に遊ぼうと化ける訓練を頑張る、という、人間…っ!…頼むから、まめたとまめきちと仲良くしてやって! とハラハラしてしまう始まりの物語なんです
人間に化けるのはなかなか難しいようで、化けられるようになる前の初心者向けの化け姿も可愛かったですし、化け姿への人間の子供たちの感想も可愛かったです
まめたとまめきちは、念願叶って子供たちと遊べたのですが…遊んでる最中になんとうっかり、化け姿が解けて、たぬきに戻ってしまいます
でも、まめたとまめきちが、慌てておうちに帰ろうとする、その背中に人間の子供たちがかけたのは、ああ、良かったね、一緒に遊べたね、友だちになれたねってじんわりと染み渡る言葉だったのです

という訳で、三作品も素敵なお話が収録された名著のご紹介でした
フォア文庫ってレーベルは凄いなあと思いましたんで、他の作者さんの作品も探してみたいです


『三ひきのこぶた』

瀬田貞二 訳 山田三郎 画

山田三郎さん絵の魅力の圧巻な事といったらない作品でした
三びきのこぶたと言えば、それぞれのこぶたがそれぞれで家を建てるシーンから始まって、色々あって末っ子の堅実的な工法をした家でオオカミを退け、三びきとも仲よく生活をはじめてめでたしめでたし…となる話だと思っていたのです
しかし、こちらはイギリス民話の原作に忠実だからなんでしょうか、藁の家の長男、木の家の次男はあえなくオオカミにぺろりされてしまいます
お腹を切って縫って助ける、みたいなファンタジーな事は何も起きません
ただ捕食され物語から退場します 弱肉強食です
更にその後の末っ子とオオカミとの丁々発止がわりと長くて、色んなエピソードがあるので驚きました
豚の姿かたちはリアルな豚ですが、あちこちに買い物へ出かけたり、たくさんレンガを焼いたり、お祭りに参加したりして、オオカミをうまいこと寄せ付けない末っ子ちゃんのお話が新鮮で楽しいですし、出かけた先のお祭りやお店に集まったたくさんの人間、レンガ焼き釜やその回りの道具に至るまで、山田三郎さんの絵の精密さ、描きこみがとにかく凄い、素晴らしいです
コミカルな滑稽話を意識されてるのか、瀬田貞二さんの訳文も冴え渡っており、声に出した時の音のリズムの良さも心地よく、三びきこぶたのイメージが変わる傑作です
兄さん豚×2を食べたオオカミを、末っ子ちゃんは鍋でコトコト煮て晩ごはんに食べ、めでたしめでたしになる結末ですが、改めてふと『ダンジョン飯』に通じるものを感じました

そう言えば裏表紙の絵が、蛇? の肉を食べている 眼鏡をかけた豚の紳士の肖像画を、豚の子供たちが眺めてる絵なのですが、子供たちがちゃんと擬人化されてて服を着てて可愛いです
でも本文の3ぴきのこぶたは全裸、というか豚のままです 何故だろう


『チロヌップのきつね』

高橋宏幸・作

『チロヌップのきつね』は、絵本版の感想とご紹介を以前書きましたが、こちらのフォア文庫版は、『チロヌップのさくら』『チロヌップのにじ』という二作も同時に収録されている書籍になります

『チロヌップのさくら』は江戸時代のおわりごろ
『チロヌップのきつね』は戦争がはじまったころ
『チロヌップのにじ』は戦中から戦後にかけて

それぞれの時代での、チロヌップ島でのきつねの一族の暮らし、その中での人間との関わりと絆、きつねという生き物が持つ同胞愛に家族愛という美しいもの
その一方で容赦なく描写される、人間が起こす戦争の愚かさや、野生動物への無慈悲な振る舞い
いくつもの時代を超えて、このチロヌップ島で起きた出来事が、善いことも悲しいことも幾度も繰り返される
そんな、どの時代でもたくましく強く生き抜くきつねと人間の姿、尊さが描かれている作品集でした

この書籍は、こんなシーンが凄いとか、ここが好きとか、そういうご紹介をするのが苦しくなる作品でもあるために、こんな書き方をしていますが、こちらもやはり名著です ご紹介嬉しかったです

という訳で、ひろうすさんご推薦の絵本児童書のご紹介でした
ご覧下さいまして、ありがとうございました

追記・さらにきつねの登場する絵本、というテーマでまとめた記事を書きました
こちらもあわせてご覧頂けると嬉しいです


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