源氏物語の解説本の、最近読んだもの三選
今年、2024年の大河ドラマは『源氏物語』の作者である紫式部が主人公なのだとか
その影響で、『源氏物語』を解説した書籍や、様々な方の手による現代語訳などが、あちこちの書店でコーナーとなって並べられています
きっと今年中に刊行される関連書籍もたくさんあるんだろうな~とほくほくです
という訳で、源氏物語の解説本の昨年読んだものと、今年読みたてほやほやなもののご紹介をしようと思います
源氏物語にまだ触れたことのない方にも、どっぷり源氏物語沼に落ちている方にもおすすめしたい三選となっています
みんなで読む源氏物語 渡辺祐真 編
ハヤカワ新書のレーベルを読むのは、この本が始めてだったのですが、世の中に数多ある『源氏物語』を解説した本の中ではとても異色で、そしてミステリとSFにめっぽう強いハヤカワさんらしさにあふれていると感じました
AIを駆使して『源氏物語』のテキストを解析されてる国文学者の方のインタビューや、英語に翻訳された『源氏物語』を日本語に“戻し訳”し自身の著作に引用されてる作家さんと、その同じく“戻し訳”を『源氏物語』全編に渡って完成させた翻訳者の方たちの鼎談など、とても現代的でポップな話題がたくさんです
一方、『源氏物語』の初歩の初歩から解説している項目もあるので、これから読み始めたいと思っている人にも、わりとガチ勢力の人にもオススメです
個人的に新鮮だったのは、イギリスの作家にして評論家のヴァージニア・ウルフ氏が、イギリスで刊行された英訳版の『源氏物語』を読んで感じた思いの丈を訴える随筆、を日本語訳にし紹介して下さってるくだりです
そんな色々とみどころがたくさんの新書なんですが、問題がひとつあって
この本に登場された方々の『源氏物語』のゆかりの作品を色々と読みたくなってしまうんです
これまでにない『源氏物語』の解説本でかつ、他の著作への訴求力もとても強い、ハブ施設みたいな新書なのでした
ミライの源氏物語 山崎ナオコーラ
源氏物語の世界である平安時代から、千年近くも過ぎた“ミライ”に住む我々が、源氏物語をどう読むと、より分かりやすく楽しく、登場人物のココロを知ることができるのか? の解説本ですが
源氏物語は読んだけど楽しめなかった、分かりにくい、登場人物の行動にイライラする! などのネガティブな感情を持つ方にオススメの本です
それだけでなく、まだ源氏物語を読んだ事がない方にも、読む前の副読本としてもオススメできます
源氏物語は、今の時代の価値観や常識、社会規範からすると、理解しがたい差別や性暴力が含まれている作品で、それが作品そのものを忌避する気持ちにつながることがどうしてもあるけど、そのこころのギャップを埋めて源氏物語に楽しく触れることのできる、優しく楽しい解説がたくさんでした
源氏物語の解説書は色々と読んでいますが、それでもこの解説書はとても新しく今の時代にこそ馴染む解説をしてくれています
それだけでなく、自分のような“源氏物語は色々とそこそこ読んでますよ~”みたいなセミプロ面をしている読み手をぶん殴るような、新しい読み方を提供してくれるんです
作中にある山崎ナオコーラさんの源氏物語の現代語訳もとても良かったです
全編、山崎ナオコーラさんの源氏物語が読めたらいいなあと感じました
源氏物語解剖図鑑 文 佐藤晃子 イラスト 伊藤ハムスター
表紙はかわいい絵柄で、女君は猫、男君は犬で描かれたポップな印象から、源氏物語をこれから読みたいと思ってる人への解説書かなあと思って読んだのですが、
ぜんぜんガチ勢向けのコアな内容でした
源氏物語54全帖の解説に留まらず、当時の風俗、宮中行事、官位の解説、源氏物語を題材にした絵画の観賞法や紫式部本人の歴史まで解説された内容で、でも収録された絵はとっても可愛い…ギャップがとても面白い本です
でも、源氏物語にある程度慣れてる人、自分の中の源氏物語像がある人でないと、読むのはかなり大変かも知れないです
絵はかわいいのに、内容の骨太さのギャップが魅力的な解説書です
こちらは去年に入院してた時に、病院に持ち込んで読んでたのですが、絵が可愛すぎて真似して描いたりしてました
今回はこちらの三選でしたが、源氏物語の解説本はまだまだご紹介したい本があります
また何かしらご紹介する記事が書けましたら、見て頂けると嬉しいです