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3つのくまさんの物語と、くまにまつわるよもやま話

先日、たまたまなのですが
Twitter(X)とnoteで、くま🧸の関わる本をオススメしている方が複数人いらっしゃって、くま🧸と縁があるなあと思い、まとめて拝見してみたらそれぞれ個性的で、かつどれも面白かったものですから
ならば、3匹のくまさんとして1度にご紹介したくて記事にしてみました
かわいかったり、切なかったり、残酷であったりするそれぞれのくま🧸さんたちの物語に、ご興味をもって頂くきっかけになればと思います



こうしてイギリスから熊がいなくなりました

ミック・ジャクソン 作
田内志文◎訳

熊に抱き締められて絶命している人の絵

中世から近代のイギリスを舞台にした、熊にまつわる残酷で陰鬱なお話が8篇収められた作品です
きっと、イギリスのかの地でその歴史と共に育った人なら、この物語の持つ寓話と現実の近さと、この物語の熊は、かつてこの地にいたのだと肌で感じてしまうリアルさに、震えながら読めるのだと思います
創元推理文庫版の訳者あとがきに、11世紀の時点でイギリスでは野生の熊はすでに絶滅しているなど、熊にまつわる歴史の解説が掲載されており、イギリスに疎くても安心でした

個人的に好きな一編は3話目の『鎖につながれた熊』です
かつて中世のイギリス(イングランド)にあった、熊をなぶり殺す様子を見物する娯楽、熊いじめにおいて、その怪力や闘いぶりが凄まじいあまりに、人間から崇拝の対象になり、持て囃され崇められる、敗北知らずの熊の話です
この本に収録されている他の作品にも言える事なのですが、とにかく人間の行いや熊への態度が酷く、しかしそれはイギリスの歴史の中の事実としてあって、
こうしてイギリスから熊がいなくなりました というタイトルそのままのラストシーンに、8編が集約されてゆく短編集なのです
デイヴィッド・ロバーツ氏による挿絵もとても豊富で、個性豊かな8編でのそれぞれの熊たちや、愚かな(しかしそれを笑うなんてとてもできない)人間たちの絵がたくさん収録されており、そちらもとても見ごたえがあります
200ページほどのボリュームの文庫でしたが、痛く刺さるフックがたくさんの短編集でした

頭のうちどころが悪かった熊の話

安東みきえ・作

目がちょっとこわい

こちらは日本の作家さんによる、7篇の短編集です
頭のうちどころが悪かった熊さんは冒頭から登場し、あ、よく見たら頭のそれは小動物じゃなくてたんこぶなんだね! って分かります
たんこぶすら顔が付いてることから分かる通り、動物を色々と擬人化した作品集で、

記憶喪失でさ迷うくま
補食した相手を思って悲しむとら
悪い果物を食べてしまった夫婦のへび
シラサギに憧れる無いものねだりのからす
ヤゴと友達になる不思議ちゃんのおたまじゃくし
森のカウンセラー役の勤めに疲れはてている牡鹿
そして、不眠症で冬眠することができない、記憶喪失のくまの友達のくま…の話で出来ています
挿絵の絵柄は大胆な筆致で、コミカルなところもありつつ、不穏さにもあふれている絵と物語の作品集です

小川未明さんの童話や、かこさとしさんの絵本も思い出す箇所もそこかしこにあり、解釈によってめでたしめでたしなのか、悲劇なのか、意見が分かれるタイプの作品がお好きな方にはきっとたまらない作品となっております


ぼくは くまのままで いたかったのに……

イエルク・シュタイナー ぶん
イエルク・ミュラー え
おおしま かおり やく

この絵を見ている人が、鏡の中の警備員である構図

ご紹介の3作品の中では、個人的に1番の辛い物語でした
ある春の日の朝、冬眠から目覚めたくまは、自分の巣穴の上に大きな工場が建てられているのを見つけます
そして、その工場を監督する人間から、なまけものの、ひげもそらない、仕事もできないまぬけなやつと罵られ、追いたてられるように、人間として工場で働くようになります
季節は巡り、冬が近づいて、冬眠する時期が迫ると仕事ができなくなった彼は工場をくびになり………という
大変しんどいし、社会に適合するのが辛い人らを追い立てる人間の意地の悪さや傲慢さを風刺する内容でもあるように感じました
この本の裏表紙では、彼がその後どうなったのかを伺い知れる絵になっている(たぶん)ので、決して悲劇のまま終わってはないと思うのですが…果たしてどうなのか、人により解釈が分かれる辛い話です


まとめと、しんどい余談


以前のつぶやきにも上げたのですが、熊の出てくる小説と言えば吉村昭さんの『羆嵐』が好きで

題名も絵も帯文もすべてつよい

他にも川上弘美さんの『神様』ですとか、A・A・ミルンさんの『くまのプーさん』など、熊の出てくる小説や他作品って、面白いもの素敵なものがたくさんあって
熊はその作品ごとに、人間を補食する害獣であったり、善き隣人であったり、友だちや幼なじみであったり、人の奴隷であったり、単なる獲物であったりと様々です くまのゆるキャラとか、ご当地キャラなんかもあちこちいます
こんなこと書いてしまったら、しんどくなりますけど、熊を色んな形で消費していることそのものが、1番の残酷な振る舞いではないかという気持ちにもなります
北海道のOSO18の事件や駆除までの経緯なども、その意外な結末まで、現地で対策している方たちの苦労も知らず、小説を読むのと同じように鑑賞してしまっていました

でも、鑑賞して消費することが、事実を知ることや語り継いでいくことにもなるし、問題をちょっとでも考える視点を持てるはずですから、消費上等、これで良いんだ、とこうしてまとめて記事にもした次第です
最後は暗い締めになってしまいましたが、読んで下さった方、ありがとうございます
もし、こういう熊の作品もあるよって方はご一報頂けるとうれしいです

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