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短歌集 『死のやわらかい』 鳥さんの瞼 感想

以前読んだ『海のうた』という歌集に収録されていた作品で、この 鳥さんの瞼 さんの短歌にとても惹かれたために短歌集も拝見してみました
柔和で繊細な雰囲気の短歌で、母や祖母の記憶や希死念慮にも溢れていて、あまり人に勧めたり感想を書いたりするよりは、本棚の隅にしまっておきたい風合いの短歌集のように感じます
ですが、よくよく読んでみると
スーパーに並ぶパックの食材を眺めているであろう心情であったり、おそらくファミレスか居酒屋で頼んだ料理を注視していたり、町を歩いている時に遭遇した動物の、時には死体のことを綴っていたりと、死に近く触れながらも、ユーモラスでもあるし生命力にもあふれている、面白い短歌集とも読めるのでした
お名前の通りに、鳥が登場する短歌が多いですが、なにげに魚そして海の短歌もあります というか鳥の内蔵系料理やお刺身を連想する作品もいっぱいある だからひょっとして食いしん坊さんなのでは
鳥や魚が大好きだけど焼き鳥とお刺身も大好き、みたいな
短歌からその人となりを想像するのは不躾なふるまいかも知れませんが、死にたがりだけど動物がすごい好きで食いしん坊、そしてネガティブ、という人物像が浮かんでしまう 共感してしまう

装丁の雰囲気は海外の麗しい詩集を思わせる、やや縦長の版型で、オールドローズの意匠の装画がシックです
でも、本文の短歌を踏まえると血や心臓をイメージした薔薇なのかも

とりわけ好きな作品はこちらです 

言い過ぎたかもしれないと思いつつうどんに赤が散るのを見てる

チェーンのうどん屋かも知れないし、台所でカップうどんを食べてるのかも知れない


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