最新情報:
この記事がきっかけで、2024/12/23にAbemaTVのAbemaPrimeに生出演させていただきました。
放送は以下のYouTubeアーカイブ動画からご覧いただけます。
私ネトボは YouTubeのコメント欄に「netobo」として登場しています ので、ご質問等ございましたら、そちらへお気軽にどうぞ。
詐欺被害撲滅のために、微力ながらお役に立てればと思います。
以降は、番組出演のきっかけとなった記事です。
番組よりも詳細をお知りになりたい方は是非。
※記事にまでご興味をお持ちいただけただけで、あなたは詐欺脆弱性の低い方です
はじめに:
「特殊詐欺なんて、騙される奴がバカなだけでしょ」と思っている方はいますか?
まぁ、そんな方はそもそもこんな記事を読まないと思うのですが。
ただ、もしそうであれば、あなたも詐欺にあう可能性が高いかもしれません。
根拠?
ええ、何を隠そう、私がそうでしたから。。
そうです、、そうなんです。
私も、詐欺にあう人を、
ずーっと「バカでしょ」と思って生きてきたんです。
詐欺被害者の皆様、本当に申し訳ないです。
つまりこれ、どういうことかと言いますと、
騙されてわかったんですが、
「詐欺被害者をバカと思っている人」が一番騙されるんです。
そういう人は、無意識的に、詐欺犯のこともバカだと思って油断してしまうんです。
だって、バカを騙すのは、バカでもできると無意識に思ってしまうからです。
だから詐欺犯をナメてしまい、油断する。
そして、いつか詐欺被害にあう、ということです。
私は今回はじめて騙されて、そのことがやっとわかりました。
あー、そういうことだったのねと。
だから詐欺が減らないのねと、納得したわけです。
そもそもバカという定義がどうなのかという話はありますが、
逆にどんなに天才でも、油断したら誰だって詐欺にあいます。
つまり、騙される人はバカじゃないんです。
単なる不注意、無警戒、無関心 なんです。
「騙される人なんてバカ!」と思ってるからそういう隙が生まれるのです。
というわけで前置きが長くなりましたが、
これは40代のサラリーマンが寝起きの「オレオレ詐欺」で「バカみたいに」騙された不幸話です。
この手の暗い話が苦手な方には申し訳ないのですが、
是非お読みいただいて、詐欺犯の手口を知っていただきたいです。
もちろん手口を知るだけでは防げないのですが、
「常に最新の手口を知ろう」という行為自体が、
防犯行動として何よりも重要だと思います。
それだけで認知機能に無意識レベルで楔を打てます。
「被害者はバカ!」と思っていると、どうしても詐欺に対して無関心になります。
それこそが危険なんです。
世の中的には被害者側の「恥ずかしい」という思いからか、実際の詐欺の詳細なやりとりに関する情報が非常に少ないと感じています。
(それはわかります。バカって言われちゃいますからね。嫌ですよね。しかし近頃は、認知機能に何の問題もない、若い方の欺被被害も非常に増えています。だからいまこそ「バカではないです」という啓蒙が必要と感じています。)
これはとても貴重な体験談だと自負しています。
こういったマインドコントロールの手口は、詐欺被害防止のために使えると思いますし、敵を知れば恐怖心を減らせます。
以下、ルポ形式、脚色なしで書いてみます。
私の記憶にある限り、超具体的に書きます。
本題:
実は数ヶ月前に「ニセ逮捕状詐欺」という特殊詐欺にあい、60万円を騙し取られてしまった。詐欺グループは3人(電話番役、担当刑事役、刑事部長役)の非常に手の込んだ劇場型犯罪である。
本稿では、詐欺被害防止の観点から、実際のやり取りの全貌を晒しておく。
ちなみに私は40代会社員であり、所謂、この手の詐欺によく引っかかってしまうような「高齢者」ではない。しかしながら、高齢者でなくとも、ふと油断した隙に、電話を取った数秒後に相手を信じてしまうという恐ろしさがある。
状況によっては、誰でも被害に遭うリスクがあるので、心してお読みいただきたい。
そもそもなぜ電話に出たのか?
私はIT関連のシステム運用の仕事をしていて、当日は有給休暇をとっていた。
しかしながら、例え休日であっても、システム障害があると、昼夜問わず運用担当者から電話が入ってしまう。
このような状況から、私には電話番号を確認せずに電話に出てしまう癖があった(当然だが、これは非常に良くないと、今では思っている。電話に出た時点で危険なのだ..)。
とにかく、寝起きのぼんやりした状態で番号を確認せずに受けた電話が全ての元凶だった。
海外の010始まりの不審な電話番号だったことは間違いないので、このような着信に出るべきではなかったのだが、理由は前述の通りである。
朝一番に警察からの電話
というわけで、午前8:30頃、朝一で受けてしまった電話の内容が以下である。先に言ってしまうと「警察からです」と言われた時点で私のマインドコントロールは完了していた形になる。
※私の回答についてだが、ほぼ「はい」など、相手の質問に従うアホな内容しか答えていないので省略する(バカすぎるという話は置いておいてほしい。睡眠中に電話で叩き起こされ、ぼーっとしている状態だったのだ。警察と疑う以前に、相手から伝えられた情報だけで、数秒で脳がパニックになってしまったのだから、マトモな思考は働いていない)
※私の名前は例で「佐藤一郎」としている
電話内容
担当警部とのやりとり
電話は暫くの保留音の後、担当警部の「吉田」という者に繋がる。
先程聞いた事件名と事件番号を真面目にメモっていたのでそれを伝える。
事件の説明
LINEビデオ通話開始
冠婚葬祭でもないのに、当日中に秋田県警なんて行けるわけがない。そして電話を切るなんて、逃亡の意思ありと伝えてしまうようなものなので、口座凍結、最悪は緊急逮捕と、最悪の状況まっしぐらだ。少なくとも、電話を切れば口座凍結されることは間違いないので、それだけは避けたいと考えていた。もはや、顔も住所も電話番号も知られているので、リモートでの取り調べを希望するしかない。この時は、本気でそう思っていた。犯罪グループの思うツボである…。そして、吉田がLINEのビデオ通話に切り替える。相手はスーツ姿、40代ぐらいで俳優のような端正な顔立ちだった。
今思えばめちゃくちゃな指示だが、この時点で私はもう完全にマインドコントロールされているので、必死だった。妻には「システム障害で必要な参考書があるので買いに行く」などと変な嘘を付いて家を出る。
※あとで妻から聞いたが「なんか怪しいとは思っていたけど、気付けなかったのが悔しい」とのこと..
漫画喫茶へ移動
1件目の漫画喫茶は半個室で上が空いているので音が漏れるということで移動。2件目の漫画喫茶については完全個室だったので、そこでLINEの取り調べを開始。取調べ中にしてはいけないルール(パソコンなどを見ること、水やトイレの時は事前に断りを入れること、等)を事細かに説明される。
取り調べの内容
以降、取り調べの問答はかなり長かったので、さすがに要約とさせていただく。
謎の口座調査
本部長との会話
通話を継続したまま、担当警部と本部長との会話が流れる。
その後の顛末
連絡を受けた妻と交番前で落ち合い、一緒に交番へ駆け込んだ。警官に囲まれて事情聴取と口座凍結をしてもらう。本署に詐欺専門の部署があるとのことねそちらへ連携してもらい、あとでそちらへ向かうことになった。
そして本署。
その専門部署の方に事情聴取してもらったが、結局のところ、被害届けを出したところで、山積みになるだけですよと言われた。また、お金を取り戻すのは銀行と話して自分でやってもらわないといけなくて、お金が戻って来るかは別の話になる、との説明を受ける。
被害届けを出さなくても記録としては残すので、もし今後犯人が捕まって万が一返金されるなんてことがあれば連絡はしますが、可能性としてはほぼないです、とのこと。
それなら被害届けは面倒なだけなので、出さないことにした。
当日中にイオン銀行へ調査依頼を出したが、後日連絡があり、口座残高は残っていなかったと報告された..。
あとがき
偽警察からLINEに誘導されても、最終的に伝えられる振込先の振込先名がイオン銀行の個人名であっても、その時点ではもう、最初の寝起き電話で警察と信じ込んで心が支配されているので、後からはもう疑えず、気付けないのだった…。
一度本当に騙されないと、この感覚や恐怖はわからないと思う。
もちろん私自身「高齢者でもないんだから、LINEの振込詐欺なんてひっかかるわけないだろう。バカだなぁ」と、タカを括っていたことは言うまでもない。また、自分にそんな詐欺電話がかかってくるとさえ思っていなかったが、まさにそこが盲点だった。
実際のところ、今は高齢者だけでなく若者もターゲットとして狙われており、全く同じ手口のニセ逮捕状詐欺の被害にあっている若者もいる。本当に誰でも騙されてしまう可能性があると強く感じた。
詐欺グループはそれこそ24時間ずっと、どうやって人を騙すかということを考えているような集団である。そんな連中を舐めてはいけない。
ありもしない罪状をでっち上げ、ターゲットを心理操作しつつ、絶望の淵へと引きずり込むという、恐ろしいテクニックを使ってくる。
「LINEで振り込むなんてバカ」という点を逆手に取って油断させてくる。そういう思いでいると、不用心になって、最新の特殊詐欺ニュースにも関心を持てなくなってしまうのだ。詐欺犯はまさに、そこを突いてくる。
今回の手口は、 そういった寝起きの電話で思考が全く働かないタイミを狙い「警察」と数秒で信じ込ませるという、非常に卑劣なテクニックである。また、電話番、警部役、本部長と、3名も登場させるなど、かなりストーリーが練られた、手の込んだやり口であったと言える。
詐欺被害は高齢者だけと思っている層は常に一定数おり、平常時は油断しているため、このような詐欺の具体的な手口を自分事としては捉えていない。より一層の警戒が求められるだろう。
願わくば、こういった情報が、あなたの役に立つことを願っている。
検索用:偽逮捕状詐欺事件