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帰る場所



小学1年生の頃。 マイホームが出来た。
つまり13年間育った家だ。


私は我が家が大好きだ。学校で辛いことがあった時、悲しいことがあった時いつでも私の味方でいてくれた。
親と喧嘩した時でさえこの家だけは私の味方だと感じられた。
「早く家帰りたいな〜」と思えたのは今思えば当たり前ではないのだと気付かされる。
私が今でもインドアなのもマイホームが大好きなことが理由の一つだろう。


そんなマイホームを手放すことになった。
大学進学を機に、私は街を出た。兄も私より1年早く出た。
父は単身赴任をしていて、一人暮らし。
母だけが家を守っている状態だった。
一人暮らしが4人。経済的に決して裕福でない家庭である私たちにとって大きな痛手であることは半人前の私でさえもよくわかっている。
だから、家を売り母、兄、私の3人でアパートを借りる決断をした。


苦渋の決断だった。大好きな家が私のものではなくなる。もう二度と私の部屋に入れない。手放すにはあまりにも思い出が詰まっている。13年。
離れるには長すぎる時間だった。

しかし、実家がある場所はあまりにも田舎なのだ。私も兄も自分の叶えたいものをここでは叶えられないことを知っていた。ここに家を残すこと、居続けることがベストなのかわからなかった。

3日前から自分のものを整理するために帰省した。ひとつひとつ整理している時、思い出がなくなる気がして怖かった。
小学一年生から中学生までならい続けた電子ピアノは捨てた。あの電子ピアノで何度も練習した発表会用の曲は二度と音を奏でない。
昨日1人で寝る時に泣いた。
そして今日。実家から離れる日。
「知り合いの𓏸𓏸さんから言われたの。『子供たちにとっては家売らないほうがいいと思う。帰る場所が無くなっちゃう』って」と言われた。
母にバレないように少し泣いた。母はずっと責任を感じていたのだろうなと初めて気づいた。
私はやはりどうしようもなく子供なのだ。


高速バスに乗ったあと母からLINEが入った
「お母さんのせいで家なくすことになってごめん」
また泣いた。


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