同じ思いで、奪いあう…
アヤラ王国
昔々、とても優しく穏やかな王様が治めるこの国はとても暖かく争いが無く、王様が自らあちらこちらに食べ物や飲み物を配り歩き、そんな人柄の王様を尊敬する平和な国“アヤラ“。
疑念や虚偽を知らない王様と国民にありきたりな感覚、争うと言うことは考えた事がなく、海の対岸の国“ヨナン帝国"は武力であっと言う間にアヤラを占領しアヤラの人達は世界中に追放されたり、逃げ延びたりした…。
ヨナン帝国は武力で制し栄華を極めて、その盛衰は呆気なく終わりを告げたが、アヤラの王様はもう既にいない。
彼等は追放されても、なお王様と共に暮らしたあのアヤラの地を心から尊んでいた。
移り住んだ場所で蔑む人達の言葉や視線の中で歓迎される事は少なく、そんな中を必死に生きたアヤラの民は時間を経て時代が変わってもあの王様と過ごした地を忘れない。
ナックルの開拓
アヤラの隣り国のナックルもヨナン帝国に侵略され、多くの犠牲を払い血を流したが、その場所から逃げる事をせずに耐え忍んだ。
やがて、ヨナン帝国の支配が終わりを告げたが、“アヤラ"のあった場所にはアヤラの民は戻らなかった。
全てが破壊されたアヤラの土地へ、ナックルの人達は瓦礫を片付けて耕し移り住んだ。
長い時間を費やし時代が流れ、かつてのアヤラの地はナックルの人達の笑い声があふれる穏やかに活きる場所になっていた。
アヤラの民の望み
ヨナン帝国時代に追放されたアヤラの民は、アヤラ人と称されてたが信じる神様が違うだけで多くの異国の地で疎まれ、 “信じる神様"が違うだけで“大量虐殺"の対象にされた…。
生き延びたアヤラの民は疎まれたり虐殺の無い、“自分達だけの国"を求めた時に脳裏に浮かぶのは、もはや伝説的なアヤラ王国の地だった…。
争いの無い穏やかな地、アヤラに戻ろう…!
穏やかなさを望み願って…!
同じ思いを巡らして…
その地は長い間をかけて、ナックルの人達が穏やかに暮す地になっていたが、アヤラの民が世界中から少しずつ戻って来た…。
ここは“アヤラの地"だと高らかに声をあげて…、ナックルの人達を追放して殺戮を繰り返す。
かつて、自分達が味わった苦悩と同じ思いを今度はナックルの人達へ…。
血を流して傷つけながら、失った愛する人への思いを憎悪に変えながら人を傷つける…。
アヤラの民もナックルの人達も戦いがなく、同じ様に子供を愛し、親を尊んび友人と語らう…、そんな穏やかな優しさを求めているだけなのに。
同じ理想を掲げて、殺戮と破壊と略奪が繰り返される…。
問われた質問…
「おとうさん、なんで“せんそう”するの?」と、不意に透き通る瞳で問われた。
大人の僕は、3歳の息子に、この世界の有り様をどう話たらいいの…?
今も何も知らない血が流される。
この小さな息子が目の前で殺されたら、僕も同じ事をするだろう…。
薄氷の様な平和な日々が少しずつ割れ初める…。
…………………… END ……………………
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