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【イタリア大学院留学】11. ミラノ(前編_ほぼ写真): イタリアの新幹線に大歓喜したはなし

どうも皆さま、こんにちは。
一気に寒くなってきて冬物の準備に悩む、アラサー社会人留学生です。

夏は外に出るのが億劫になる程暑いリミニですが、この街の緯度は北緯44度。
日本だと網走に相当する位置です。寒くならないわけがありません。

最低限、風邪をひかないように準備したいと思います。

さて、前回の記事でようやくリミニでの生活基盤が整いました。

今回は日本から持ち込んだ仕事の都合でミラノに向かった様子を振り返りたいと思います。

仕事都合とはいえ人と話す以外は旅行のようなもの。イタリアの2種類の新幹線やミラノの街並みなどを存分に楽しみつつ、リミニとはまた違う観光都市のあり方を見てくることができました。

おそらく量からして記事2本を使ってまとめていくことになると思います。気長にお付き合いいただければと思います。
前編となるこの記事では、ミラノへの道中とミラノ市街地の様子について振り返っていきます。


1. (鉄分)鉄オタ、イタリア国鉄の本気に大歓喜

1. なんとも豪快な早割

2024年9月4日、リミニからイタリア国鉄(Trenitalia: トレニタリア)でミラノに向かいます。

ありがたいことにリミニは交通インフラが人口規模の割には整っており、ミラノまで直通する高速鉄道が大体1~2時間に1本程度あります。その所要時間は便にもよりますがおよそ2時間(1日数本、ミラノのさらに先のトリノやローマ、ヴェネツィアまで直通する便もあります)。

イタリアの高速鉄道は基本的に全車指定であるため、事前にネットで切符を購入します。

定価だと大体こんな感じ。
安い順から「普通/快速→在来線特急→新幹線」といった感じです。

日本の鉄道でも最近になって早割などお得な切符が多く販売されるようになってきましたが、イタリアの鉄道はそれの遥か先をいく豪快なダイナミックプライシングを採用している様子。

今回は出発の3日前に予約したことから何の割引もなく定価(61ユーロ: 10000円強)での購入となりましたが、たとえば1ヶ月くらい前にイタリア国鉄のリミニ発・ミラノ行きの新幹線を予約しようとすると以下の通り。

横軸が座席のグレードで、縦軸が割引オプション。
30歳以下で、かつイタリア国鉄のネット会員であればミラノまで片道なんと3000円強。
定価の約7割引です(しかし、その分返金も変更もできません)。

高速鉄道で片道2時間というのは、日本で言うならば東京から新潟または盛岡あたりまで。定価であれば価格も同じくらいでしょうか。そこまで3000円強で行けると言うのですから、旅人に優しい国です(しかもどうやら私の大学はTrenitaliaと提携して、学生には無条件で特急列車20%オフの代金を設定しているようです。神、、、、)。

ここまで豪快に割引しているのはイタリアにあるもう一つの高速鉄道「Italo: イタロ」とバチバチの競争を繰り広げていることと決して無関係ではありません。ミラノからの帰り、ボローニャまでItaloを利用して同区間で乗り比べてみたので、次の記事で詳しくその様子を紹介したいと思います(簡潔に言うならば、安さのTrenitalia, サービスのItaloといった感じです)。

さて、いよいよ出発です。

2. モンスター機関車のサンドイッチ

9月4日、11時。

リミニ駅で今回お世話になる新幹線「Frecciarossa」を待ちます。

リミニ駅から出発する最重要列車ということもあり、ホームにはそれなりの数のお客さんが。駅員さんも複数人配置され、ムードが高まります。

入線していたIntercityの牽引機関車の側面。
忘れていましたが、留学期間中にオリンピックがあるようです。

そして出発時刻の5分前、なんかすごい爆音と共に入線してきました。

今回お世話になるイタリア国鉄の最速達列車「Frecciarossa」

13両編成のうち、11両が動力非搭載の客車。先頭と最後尾は電気機関車です。流線型の機関車はもちろんのこと、客車についても連結部分を幌で覆ったり車体に埋め込まれるタイプのドア(プラグドア)を採用して車体の凹凸を極力少なくしたりと、「客車を高速化させる」という日本ではまず見ない作りにもうワクワク。
(日本だと客車列車はどう頑張っても100km/h程度ですから、、、)

乗降時には2両に1人くらいの割合で添乗員がドア側に立ち、乗客をサポートしていきます。停車する各駅では乗降時間が概ね5分程度とかなり長く取られており、その点からもこの列車の需要とステータスの高さが窺えます。

大荷物の乗客が多かったこともあり、列車は2分ほどの遅れでリミニを出発。ミラノまで2時間8分の旅の出発です。

今回予約した座席。
最上級(に近い)等級を除き、基本的には4人がけのボックスシート。
その中で車端部にわずかにある1人がけのシートを指定できたのはラッキーです。
ボックス中央には折りたたみ式のテーブルが設置されており、コンセントもあります。
後述する理由から、コンセントは必須設備です。

リミニ〜ボローニャ間は高速化工事がなされていないため、新幹線とはいえど在来線特急と大して変わらない速度で在来線と同じ線路の上を走ります。しかしボローニャから先は新たに整備された高速新線「Alta Velocità(直訳すると「高速代替線」みたいな感じ)」を、最高時速300kmで爆走していきます。

線形が最高に良い新線の上を快走していきます。 保線状態もかなり良さそう。
(列車に乗るときはモーター音などを楽しむために、
車端部の台車の上の座席を予約するのが私のこだわり)

動力車が2両だけではあるものの、編成全体の出力は8,800kw。これがどれくらいかというと、現在8両編成で運用されているJR西日本500系新幹線の編成出力とほぼ同程度、10両編成のJR東日本E5系新幹線の編成出力よりやや低いくらい。しかしほぼ全車両が電動車である日本の新幹線に対して電気機関車2両で同じ程度の出力を出すのですから、モンスターっぷりが窺えます。

日本とは異なり広大な平野部にほぼまっすぐ線路を敷けること、高低差が少なく、加減速の機会が少ないことから採用さている動力集中方式ですが、その分客車は静かで乗り心地は抜群。ネット予約段階では進行方向がわからないため、予約次第では「300kmでバックする」ことにもなりかねないのが玉に瑕ではあるものの、それを差し引いても十分快適です(ミラノからの帰りの新幹線では全速力のバックを体験することになりました)。あとはトイレがどうにかなれば完璧です。

設備自体は日本の新幹線と大差ない十分なもの。
しかしまあ「もうちょっとどうにかならんのか」というのが率直な感想。
便器の方を映さない点から察していただければと思います。

3. ながーーーーーーーーーーーーい運行系統

そしてイタリアの新幹線の特徴として欠かせないのが「運行距離の長さ」。

列車の走行路線と現在位置、速度、トイレの利用状況がリアルタイムで表示されます。
この便はアドリア海に沿ってイタリア半島を縦断してきたようです。

私が今回利用した便はイタリア半島南東部の都市・バーリからミラノまでを約7時間かけて直通する便で、その距離およそ約900km。日本だと東京から山口県にギリギリ入るくらいの距離です(その割に時間かからない?と思われた方、慧眼です。イタリア半島の西岸ではボローニャから先、そして東岸ではナポリから先は高速新線が建設されておらず、最高速度も在来線と同じものに制限されるのです)。

日本のように特定の大都市に需要が集中しているということはさほどなく、停車駅ごとにおおよそ満遍なく需要があることから、東京-名古屋、東京-仙台のように短・中距離で系統分離することなく、基本的にはイタリア北部の大都市から半島南部の都市まで停車駅をほぼ固定した上で直通する運行系統が組まれているのです。

ミラノ- バーリ便も確かに長いですが最長ではなく、同一系統であればミラノのさらに北のトリノから、バーリよりも更に南のレッチェまで直通する便が最長(リミニより先のアドリア海沿岸では地域輸送も担うためこまめに停車し、その所要時間なんと9時間40分!)。

また、別系統も含めたイタリア国内最長列車はトリノと地中海沿岸(イタリア西岸)にあるイタリア半島最南端のターミナル・カラブリアを直通する系統で、その所要時間なんと約11時間!

運行距離にしても約1,350kmと、東京駅から鹿児島中央駅までとほぼ同じ。鉄道ファンとしていつか乗り通してみたいですが、昼行特急に11時間乗り倒す勇気が湧きません。まるで日本の国鉄がそのままアップデートされたかのよう。

・・・いけません。このままいくと鉄道だけで延々と語れてしまうので、後日鉄道だけで1記事作ることにします。

兎にも角にも、イタリア国鉄の新幹線を満喫し、いよいよミラノに降り立ちます。(10分ほど遅れはしましたが、これも別に運行がガバガバだったとかトラブルがあったとかそういうわけではなく、単純にダイヤの組み立て方法から来るものだと考察しています。詳細はまた後日!)

ミラノの市街地に入った段階で減速を開始し、ゆっくりとMilano Centlare(ミラノ中央駅)に入線。
イタリア経済の心臓とも言える街のターミナル。降り立つ前からスケールの大きさを感じます。

2. ミラノ中央駅:石造建築に詰まった大ターミナル

13時35分、ミラノ中央駅に到着です。
ミラノ駅に降り立った時の第一印象がこちら。

うお、、、、でっか、、、、、

社会人留学生の心の声

日本の建物と比較して天井が高いのはミラノ中央駅含めてどこもそうなのですが、それだけでは形容できないスケールの大きさを肌で感じました。

長い櫛形ホームを歩きます。
私がお世話になったFrecciarossaは写真右側。
左側は帰りにお世話になる私鉄新幹線「Italo」。これからバーリに向けて出発するようです。

大きいドーム屋根に覆われた櫛形ホームはフランクフルトのそれを想起させます。しかしこちらはイタリア最大の経済都市であり、イタリア北部最大のターミナル。行き交うお客さんの荷物の大きさが違います。

リミニで利用するものと同形式の近郊電車ですが、北部は色が異なるようです。
機関車牽引ではない動力分散方式の新型車両「Frecciarossa1000」。
設計最高速度はなんと時速400km。360kmでの営業運転も視野に入っているそう。
日立製ということもあり乗ってみたいのですが、現時点まで機会に恵まれず、、、
在来線特急「Intercity」の牽引機関車。
こちらは色々な色の車両があるようです。
Italoの最上級座席「Club」を利用する方のためのラウンジ。
Trenitaliaも同様のサービスを展開しており、まさに真正面からの殴り合い。

そしてホームの付け根にある自動改札を抜けると、さらに広い空間がお出迎え。
(自動改札はミラノなど大都市限定の珍しいものらしいです。基本はオンライン購入+車内改札(+罰金)のため、設置しないのも理解できますが、、、)

「でかい、広い、古い」の三拍子揃った空間です。
どうして天井が高いだけでこれほどまでに雰囲気が出るものなんでしょうか。

いくら古きを残しているとはいえミラノはイタリア経済の拠点。1つ下の階に降りると一気に都会的かつ機能的な作りに変わり、迷路のような通路を経て地下鉄とも接続しています。

日比谷駅・大手町駅あたりを思い出す構造です。

地上階にはこれまた広大な切符売り場が。
競合する2つの鉄道会社がオセロのように券売機をそこら中に配置し、隣り合わせで窓口を設置していたりと、見てて清々しくなるほどにバチバチです。

Italoはそもそも高速鉄道限定である上、ネット割引やポイント制度が比較的充実しているためか、
対面で切符を求める人は少ない様子。
車両含めて、ワインレッドを基調としたおしゃれな印象を感じます。
高速鉄道だけでなく、地域輸送を一手に担うTrenitaliaのカウンター。
さまざまなニーズを持つ多くのお客さんで賑わいます。

JR東海と名鉄のように、都市間輸送と地域輸送である程度の棲み分けをしていたり、どちらかの会社に利用者や便数が偏る区間もあるものの、高速鉄道においてはJR東日本と京急、JR西日本と阪急のような真正面からのど突き合い。利用者としてはそれで安く、快適に移動ができるのですからありがたい限りです。

切符販売エリアを抜けるといよいよ出入口に近づきます。

とってつけた感満載のエスカレーター。
ジワりました。
中央駅正面、出入口前の門の中。
あまりにも大きい石造りのゲートにもはや笑えてきます。
あいにく工事中でしたが、ミラノの玄関口の威容は十分に見て取れます。
スマホの広角レンズでも収まらない、威風堂々とした駅舎です。

駅舎由来かもしれませんが、ボローニャのイメージカラーが「赤」だとしたらミラノはどちらかというと「白」の印象を受けます。街を歩いていてもリミニほど色鮮やかな印象を受けず、現代的なモノクロ建築が多かったり、パステルカラーが多用されているように感じました。

駅構内でも十分見どころ満載。1日いても空きなさそうです。
しかし待ち合わせがあるので、ずっと駅にへばり付いているわけにもいきません。これから街中を歩き回ります。

・・・・と、街中を歩き回って眺める様子まで記事にできればと思いましたが、分量がすごいことになりそうなので街歩きはそれ単体で記事にしようと思います。今回は一旦ここまで。

おわりに

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

次回はミラノ来訪の後編・・・と思っていましたが、中編です。
イタリア経済の中心・ミラノにて、時代が入り混じるカオスな様子をお伝えしたいと思います。

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