あっさりスヤスヤ!催眠子守唄
あなたは『おやすみロジャー』という絵本をご存知だろうか?
読むだけですんなり子供が眠ると一時期話題になった絵本だ。
なぜ読むだけで子供が眠る様になるのか。
実はそれには催眠が深く関わっている。
今回は、催眠の技術を応用した子供の寝かしつけ方を解説していく。
なぜあの子はすぐ眠ったのか
私がお世話になっている先輩の家にお邪魔した時の事だ。
その先輩の家には小学生のお子さんがいる。
私も何度かお会いしてるので、非常に懐いてくれて可愛いお子さんだ。
しかし、その日は少し困った出来事があった。
夜遅くになってもその子が、「寝ない」と言い出したのだ。
まあ、我々大人が居ては眠る事ができないのもしょうがない事ではあるが...
困り果てている先輩夫人を見かねて、私は彼を寝かしつけることにした。
いつもお世話になっているのだから、そのくらいはお安い御用だ。
さて、私は彼の頭を自分の膝に乗せて語りかけた。
「○○くんはまだ寝たくないの?」
「うん!絶対寝ない!」
「よし、わかった!寝なくても大丈夫!その代わり絶対に寝ちゃダメだよ?寝たら○○くんの負けだ!」
「わかった!」
彼は絶対に寝ないと約束してくれたが、私はこの勝負に負けるつもりはなかった。
ここから催眠術を応用する大人気ない私の攻撃が始まった。
「○○くんはいつもどんな格好で寝てるの?眠る瞬間ってとても気持ちがいいよね。心が落ち着いて、身体の力が抜けていくあの感じ。考えただけで眠くなりそうだ。寝る時の呼吸はとてもゆっくりだって知ってる?そう、今の○○くんみたいに。ウトウトしてる時もそんな感じだよね。まぶたが少しずつ重くなって、目が閉じちゃうんだよね。気がついたらだんだん眠くなっちゃうものだよね。」
もちろん、実際の場面では相手の受け答えなどもあったため、一方的に話していた訳ではない。
しかし、その様な会話を含んでも5分ほどで彼は眠りについた。
私の膝の上から抱き抱えられ、寝室に連れて行かれる間も、彼は一切起きなかった。
ここからは、今の言葉のトリックを解説していく。
眠りを想起させるチリバメの法則
チリバメについては、以下の記事で詳しく解説している。
チリバメとは、こちらが伝えたい気持ちや、相手に想像して欲しい事柄に関する言葉を随所に散りばめる事だ。
先ほどの私の言葉を見て頂ければ、“眠り”に関する言葉が随所に含まれている事がわかるだろう。
太字にしてある、「いつもどんな格好で寝てるの?」と「ウトウト」は特に分かりやすいだろう。
寝ている格好を尋ねることで、自分が普段どんな格好で寝ているか想像する。
それだけでも人は眠くなってくるものなのだ。
冒頭で言及した『おやすみロジャー』もこのチリバメの原理を使っている。
物語全般において、眠くなるワードや仕掛けが散りばめてあるのだ。
ただの会話の様に見えて、眠くなるキーワードを繰り返し相手の心にすり込ませる事が、お子さんを寝かしつける第一歩となる。
この様な原理を知ったうえで、子守唄の歌詞などを見てみると面白い発見があるかもしれない。
ダメダメ法
以下の記事で、「〜しちゃダメ」というのは逆効果になると述べた。
人は“ダメ”と言われるほど、その事を考えてしまうからだ。
今回は、その様な人間の脳の機能を逆手にとってみた。
私のセリフの太字にしてある「絶対に寝ちゃダメだよ?」という部分。
これは、「寝ちゃダメ!」という事で相手に自分が眠るところを想像させている。
「サンタさんが来るまで絶対に寝ない!」と言いながら、数分後にはスヤスヤ眠る子供を想像してみよう。
これも同じ原理だ。
「絶対に寝ないぞ。絶対に寝ないぞ」と考えるほど、頭では「眠る」という事を考えてしまっている。
その結果、数分後には眠りについてしまうのだ。
この様な現象を逆手にとれば、寝かせたい我が子を眠らせる事も簡単なのである。
指摘法
催眠術には追い込み暗示というのがある。
例えば、催眠術で腕が上がるという現象を起こすとしよう。
テレビなどでよく見る催眠術では、「あなたの腕がだんだん上がります」と叫ぶだけでは終わらない。
「そうです。その様にどんどん上がる。もっと上がる。もっともっと上がる」という様に追い込みをかける。
これにより、最初は自分でも腕が上がっている事に気がつかなかった人でも、指摘される事によりどんどん腕が上がってしまうのだ。
「相手が腕が上がっていると言うのだからきっとそうなのだろう。ということは自分は催眠術にかかっているんだ」
という感情が人の心の中には芽生えてくる。
これにより、どんどん深い催眠にかかっていくのだ。
少し前置きが長くなったが、人は自分以外の人物から指摘されたことはどうしても意識してしまう。
人から言われると、自分では気がついていない事でも「きっとそうなのだ」と思ってしまう。
あなたも、「なんで今笑ってたの?」と誰かに言われた事はないだろうか。
恐らくその様な時、だいたいは自分では笑っていた事に気がついていないだろう。
しかし、人から言われた瞬間に“笑っていた”ことを否定する人は少ない。
恐らく、「ああ、自分でも気がつかないうちに笑ってたんだ」とその指摘を受け入れるだろう。
この法則を利用したのが、「そう、今の○○くんみたいに」というセリフだ。
正直私にとって相手の呼吸の速さはこの時点では関係なかった。
指摘することで相手が、「ああ、自分の呼吸はゆっくりなんだ」と思ってくれるだけでいいのだ。
このセリフの前に、眠っている時は呼吸がゆっくりである事を伝えていた。
だからこそ、「自分の呼吸はゆっくり=眠る」という様に勝手に相手が結びつけてくれるのだ。
他にも子供を寝かしつける時に使うとしたら、「今少し寝てたね」や「眠くなってきた顔してるよ」なども使いやすいだろう。
まずはチリバメから
さて、今回は少し説明が長くなってしまった。
読み難いと感じたら申し訳ない。
今回は、今まで紹介してきた催眠術の技法を随所に含んだ事例となったため、少々複雑な構成になってしまった。
しかし、今回の技術で重要なのはチリバメの法則になる。
言葉の端々に眠りに関するキーワードを散りばめる事からまずは初めて頂ければと思う。
それだけでも効果は発揮されるだろう。
そして、もう一つ重要なのは、静かな声でゆっくり語りかける事だ。
相手を寝かしつけたい時に、大声で話かけるのは適切ではないという事はご理解頂ける筈だ。
落ち着いた声で、眠りに関する言葉を語りかける。
これを意識して、今日からのお子さんの安眠を勝ち取って頂きたい。
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