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アメリカ育ちのくせに、即興で日本舞踊を踊る娘に笑かされた話
娘は歌ったり踊ったりするのが好きだ。
テレビや映画で観た歌や踊りをすぐにコピーする。もちろん、そこは6歳児なので、完全にはコピーできていない。でも、雰囲気は十分つかんでいる。全身をフルに動かして表現するダンスは、子どもながらに迫力もある。
それから、即興でいくらでも歌を作り出せる。リズムも音程もはちゃめちゃな「音」ではない。ちゃんと始まりがあって、中盤があって、終わりもある。「音楽」になっている。
我が子に対する贔屓目を差し引いても、これはなかなかすごいんじゃないかと常々思っている。ある種の技能である。
ある日、娘が、どこからか扇子を見つけてきた。もうずいぶん昔に、わたしが日本の友人からプレゼントされたものである。
娘は、その扇子をおもむろにしゃっと開いて、ゆったりと踊り始めた。
あ、これ、日本舞踊。
アメリカ育ちの娘がどこで日本舞踊を知ったのかは定かではない。日本に行ったときにテレビで見かけたのか、それとも、オンラインで受講している日本語クラスで先生が紹介してくれたのだろうか。いずれにしても、わたしは教えていない。
膝を軽くかがめて、体勢を低くしたまま、右へ左へゆっくりと動く。足の運びが、それっぽい。広げた扇子を高く掲げたり、そうと思ったら、さっと下へさげてみたり。わたしも日本舞踊の詳しいことはよくわからないけれど、即興でやってみたにしては、ポイントを押さえているような気がする。
ときどき、ヒップホップ系の動きが混ざるのがまたおもしろい。そこだけ、動きもスピードも明らかに異質である。
まあ、アメリカでよく見ているのはこういうダンスだもんね。ゆっくりのんびりした日本舞踊の合間に、一瞬さっと出てくるヒップホップが、ぴりっとしたスパイスを加えている。
いいね、いいね。
いろんな意味で感心しながら声をかけると、娘は一段と得意になって踊り続ける。口ずさんでいる歌も日本の伝統音楽のように聞こえる。
こんな即興もいけるんだ。可能性が底なしだな。
と思ってよくよく聞いてみると、ものすごくテンポのゆっくりした「あわてんぼうのサンタクロース」だった。
わたしは、ぶはっと噴き出した。
この踊りにその曲をあてるセンスが最高すぎる。
(おしまい)
読んでくださってありがとうございます。
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