【ゲス顔のマンガレビュー・note版】#10『俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていた』※ネタバレあり
どうも皆さんこんにちは、マンガ系 YouTuberのゲス顔です。
今回ご紹介する作品はこちら。
『俺だけレベルが上がる世界で悪徳領主になっていた』
今回はこちらの作品、漫画版2巻まで読んだレビューとなっております。
この作品に対する僕の感想を一言でまとめるのならば、「マンガは顔だよ、兄貴」といったところでしょうか。
この作品は、いわゆる異世界転生モノ。あるいはゲーム世界転生モノといったジャンルでございます。
主人公の名は長谷川龍一。ごくごく普通のサラリーマンですが、類まれな才能がありました。
それはゲームの才能。大ヒットした戦略シミュレーションゲームで、獲得ポイント世界一を達成するという偉業を成し遂げたことで、感無量だと悦に浸る長谷川くん。
その直後、ゲームの画面に「レジェンダリーへの挑戦権を差し上げます」という文字が。大好きなゲームの新しいモード…これはやらねばなるまいと、即座にイエスを押す長谷川くん。
……が、駄目。何も起きずに画面が固まり、仕方がないと眠りにつきます。
そして、目覚めたときにはあら不思議。自分の姿が見知らぬ者に。
調べた結果、長谷川くんはなんと大好きなゲームの登場人物、エルヒン・エイントリアンになってしまっていたのです。
そして同時に思い出します。このエルヒンくん、ゲームの中では開始時点で既に死んでいるキャラクターでした。
「こんなもんどうすりゃいいんだと思わせたいんだろう?そこが甘いぜ!」と、ピンチにも関わらず、長谷川くん改めエルヒンくんは余裕シャクシャク。
なぜなら、この世界はゲームを通してとはいえ隅から隅まで知っているのです。
ゲームキャラクターで言うならば、俺は間違いなくチートキャラクター。
いくらやりようはあるのだと余裕を見せます。
しかし、エルヒンは今日が何日かというのを聞いた瞬間に再び絶望します。
なぜならば、自分の国が滅び、自らが死んでしまうのは明日だったから。
知識はあるけれど、時間がない。開始15分で詰んでしまった!
果たして、エルヒンくんの明日はどっちだ。
といった形で物語がスタートします。
ゲームの知識を持ってその世界に転生し、知識を使って無双するぜという物語は、なろう系でよく見かけるものです。もちろん、この先もそういう方向に物語は進んでいきます。
主人公にはゲームの世界に関する圧倒的知識があり、それ故に転生先の世界でも様々な先読みといいますか、まるで未来のことがわかっているかのように行動できるので、一気に勝利へと駆け上がっていく流れをやります。
それだけならばよくある展開ですけども、この作品はゲームの世界に転生しゲームの知識でチートをするパターンです。
その中でも特徴的な部分が2つあると思っていますので、今回はその特徴を中心にお話していきたいと思います。
まず1つ目、それは圧倒的ピンチです。
主人公が転生したエルヒンという男は、タイトルにもある通り、悪徳領主なんですよ。
もう、それはそれは底抜けの悪徳領主。
おかげさまでですね、彼の治める領地っていうのはもうズタボロです。
領主である主人公が指揮官を招集したところ、1人も来ない。
仕方がないのでエルヒン自身が兵舎の方へ赴くと、そこではなんと賭場が開かれ、農民から金を巻き上げている。
さらに借金漬けにした農民から娘たちを巻き上げて、裸でレースするなんていう下品な競技までやっている始末。
そしてそれを悪徳領主エルヒンは容認、あるいは先導していたと。
……もう最悪です。
そんな状況にも関わらず、明日には隣の国から大軍が攻め寄せ国が滅ぼされ、自分は処刑される未来が見えている。
いやもう、「こんなのどうにもならんだろ」というところからまず始まります。
本来であればもうどうにもならない。どう考えても詰んでいる状況を主人公の世界1位のゲームの腕前と知識で覆していく。
これが、大変楽しいです。
もちろん、究極的に言ってしまうならば全てご都合主義です。
どれほどピンチに見せかけたところで、それはあくまで作者が意図したものであり、それは覆される前提で生み出された見せかけの困難です。
主人公は的確にその困難を乗り越えるための知識や行動を選択していける。
ゆえにご都合主義ですし、突き詰めればいつもの単なる無双ものではあるんですけれど。
でも、そんなことは重要なことじゃないんです。
大事なのは、どう考えてもクリアできないだろう、こんな壁乗り越えられないだろうというのを設置して、主人公がポーンと軽々とそれを越えていく。
これが大事なわけです。それこそが無双ものの大事なポイントなわけです。この作品はそれをしっかりやってくれています。
明日には滅びる国、処刑される自分。何とか手を打とうとするも、指揮官たちは集まらないし、まともな兵士も存在しない。
敵はまさしく大軍でどうしたらいいのかという展開を主人公のゲームの知識と腕前、そして機転や度胸で覆し、やった大勝利だ!となる。
やはり、展開の気持ちよさはあります。
そのためには、やはり壁は大きい方がいい。谷は深い方がいい。
それをちゃんとわかって作ってるなという感じがします。
なぜなら、一度うまくいったらそれでおしまいということにはならないからです。
この作品、何か一つ問題を解決したと思ったら、その矢先に別の絶望がやってくる展開をきちんとやるんです。
例えば、最初の大国を何とか追い払った。がんがんレベルも上がって、よしこれで自分の思い通りの攻略を始められるぞと思ったら矢先、ゲームにおけるの英雄キャラクターによって悪徳領主を「切り捨てごめん!」と言って襲い掛かられてしまう。
理由はエルヒンによる悪行、特に重税を課したことにある、と。
もちろん転生前の自分が悪徳領主であることは間違いないので、全ての悪行を否定することはできない…けれども、主人公は「税率は絶対に違う」と考えます。
つまり明らかに大袈裟な噂が立っている、と。
なのでとりあえず1つ覆せば、相手の殺意も収まるだろうと思って領地を回ってみたら、本当に税率が9割だったと言われてしまいます。
……はい、終わった。となるんだけれども、それもひっくり返していくという形になるんです。
こんな感じにピンチを主人公の知識、経験、機転で攻略し、また新しいピンチがやってきますので、それをどうにか解決するという流れの繰り返しの面白さになります。
基本的に、毎回ピンチの形が違うんです。
少なくとも2巻までの間では、解決すべき問題の種類っていうのがたくさんあって、今回はこういう問題か。今回はこういうトラブルかという流れを繰り返す。
これがやはり面白いんですよ。
それは、作品の舞台である主人公が転移したゲームが、戦略シミュレーションゲームだからこそという部分もあるのかなと思います。
その部分を生かしたトラブルを次から次へと出していく。
それらは普通に考えたら絶対解決できないことなんだけれども、主人公にはゲーム知識というチートがあるから何とか解決し無双できるというこの流れが、非常に僕は好きなわけです。
そして、この「ピンチ→勝利→ピンチ→勝利……」という繰り返しの展開を面白くしている要素が2つ目のポイントです。
それは、「主人公の変顔」というものです。
この作品の主人公エルヒンくんは、とにかく表情がめちゃくちゃ変わります。
絶望したときの顔や勝利を確信したときの顔、悪いことしようとしてるときの顔など。もうね、同一人物とは思えないぐらい顔が変わるわけです。
これが僕はこの作品を面白いものにしているんだと思っています。
もちろんね、この変顔や顔芸そのものがおもしろいと思うところもあるんですが、正直その部分だけを取るならば、少しくどいと感じます。
ひたすら主人公が変な顔をするのを見せられるというのは、「漫画としてどうなのよ」というのは確かにあるんですけれど、この作品においては単純に顔が面白い以外に別の大事な意味があるんじゃないかと思っているんです。
それが、状況説明としての表情というのもですね。
この作品の舞台は僕たちの知ってる世界とは違うところなわけです。
しかも、作中における架空のゲームの世界となっています。
となると、この世界のルールって、僕たち読者にはよくわからないわけです。
確かに、戦略シミュレーションゲームですから、プレイした人からすると何となくわかる部分もありはします。
しかし、完璧に一致するわけではありませんので、ゲームの世界のルールはよくわからないんです。
もちろん説明はしてくれます。構成力がある漫画家さんが執筆しているというのもあるのでしょう。
くどくならないレベルできちんと説明はしてくれていますが、それだけだとわからないことがあります。
特にわかりにくいのがピンチの部分。
もう少し言うと、どのくらいピンチなのかをうまく把握できないんです。
特にこの作品は主人公に知識チートがあるので、知識チートを持っている主人公にとって絶望的な状況を説明だけで読者に理解させるのはすごく難しいことだと思います。
小説みたいに文章だけで構成されているものならば、しっかりと説明する形で表現できるかもしれませんが、漫画では細かいことまでできないといえます。
だけど、主人公が今立っているピンチはどのくらいの困難なのかというのは、この作品の面白さに直結する部分なわけです。
今の状況がどのくらい絶望的なのかをどう説明するのか。
主人公が絶望の表情を浮かべればいいわけですよ。
もうこんなの絶対無理だという顔をすればいいわけです。
これ一発で、主人公が今どのくらい苦しんでいるのかがわかる。
自らをチートキャラクターと自称している主人公にとって、どのくらいやばい状況が目の前にあるのかというのが、読者にきっちり伝わるわけですね。
これはピンチ以外の状況も同じです。今どれくらい主人公が調子乗っているのか。
すなわち、今イケイケドンドンな状況に立っているのを見せる場合は調子に乗ってる顔を見せればいいし、主人公がやろうとしていることがどれだけ外道なことなのかを示すのなら、ゲスい顔を見せればいいわけです。
これは、適宜きちんと入れていけます。ということは、漫画家さんがこの作品のどこが面白いのかという要点をきちんと掴んでいるのだと思います。
実際、顔芸があるからこそ主人公が今どれだけの絶望に立たされているのか分かりやすいですし、そしてそれを逆転したときの主人公の喜ばしい顔が面白いなと思えるわけです。
ただし、それが何となくギャグっぽく見えるっていうのは否定しません。
この変顔や顔芸はこの先にとって欠かせないものとは思うんですが、そのせいで作品が笑いを誘う内容に見えるっていうことは、否定しません。
なので、すごく真面目に内政ものや戦略ものをやるという作品を望んでいる人からすると、ふざけているのかと言いたくなる気持ちもわかるので、そこはあらかじめ注意点として述べておきたいと思います。
というわけで、総評です。
「愉快で楽しい戦略モノ」といったところでしょうか。
雰囲気がコメディ的という感じになっていますけれども、そこはコミカライズに際して絵を主体とした作品として描いていく部分のところだと思います。
むしろ、お話の軸の部分はきちんと戦略シミュレーションゲームの世界を超不利な勢力として攻略していく流れをきちんとやっていると思います。
ピンチを覆す際のやり方や攻略法も、割と理にかなったやり方をしているなと感じますし、そこら辺のガバガバ感も薄いかなと思います。
なので、笑えるノリで読める戦略モノみたいな作品に興味がある方は、ぜひ1巻を手に取っていただければと思います。
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