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【孤読、すなわち孤高の読書】我が孤読編愛録

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孤島に持っていく本を問われた時、 自分の余命が分かった時、 人はどんな本を選び読むのだろう? 本棚はその人の思考の露呈である。 となると、私の本棚は偏屈な愛情に満ちている。 つ…
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#耽美主義

【孤読、すなわち孤高の読書】谷崎潤一郎『刺青』

【孤読、すなわち孤高の読書】谷崎潤一郎『刺青』

無垢なる美が魔性へと変貌し創造主をも支配する、衝撃のデビュー作。

[あらすじ]
谷崎潤一郎の『刺青』は、江戸の空気が濃密に滲む、妖艶にして凄絶なる美の挿話である。
人間の皮膚に刻まれた刺青という芸術は、単なる装飾ではない。
それは人の魂にまで深く触れ、その者の本性をあらわにし、時には人間の在り方そのものを転倒させる力を秘めているのだ。
清吉は、一流の彫師であった。
彼の手は鷹の爪のように鋭く、し

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【孤読、すなわち孤高の読書】川端康成「眠れる美女」

【孤読、すなわち孤高の読書】川端康成「眠れる美女」

美と若さ、老いと死を照らし出す静謐と諦念の物語。

[あらすじ]
『眠れる美女』は、老いと死、そして若さと美の儚さが交錯する物語である。
江口老人は友人である木賀の勧めにより、ある秘密めいた宿を訪れる。
この宿では、若く美しい女性が眠りに落ちたまま客を迎え入れるのだ。薬で眠らされた女性たちは一切目覚めることなく、老いた男たちは彼女らと何をするでもなく、ただ一夜を共にする。
その美しさは、手の届かな

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【孤読、すなわち孤高の読書】谷崎潤一郎「秘密」

【孤読、すなわち孤高の読書】谷崎潤一郎「秘密」

作者:谷崎潤一郎(1886〜1965)
作品名:「秘密」
刊行年:1911年刊行(日本)

谷崎美学が凝縮した、闇に潜む欲望と退廃の誘惑。

[あらすじ]
夜の闇を纏った街を舞台に、人間の愛と欲望、そして自己の本質に迫る物語である。
主人公は誰にも知られぬ秘密を抱え、自己の性を超えた扮装に身を委ね、夜毎、化粧と女装を纏い彷徨う。
ある夜、ふいに現れた過去の恋人であり妖艶なT女との再会によって、主人

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