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【日向坂文庫#2】『刑事の子』宮部みゆき(表紙 加藤史帆)

日向坂文庫2冊目は、こちらの作品。宮部みゆきさんは母が好きな作家さんで、その影響で学生のときにたくさん読んだ。最近はあまり手に取っていなかったが、「絶対に面白いだろうな」と確信を持ってページをめくり始めたのは、当時の思い出があったからだ。

「日向坂文庫」のようなキャンペーンは、新たな作家さんと出会わせてくれる良さもあるが、以前よく読んでいた作家さんとの再会という素敵な機会も与えてくれる。

刑事の子、中学1年生の順

中学1年生の順と刑事である父が暮らす町には、ある家で人殺しが起きたとの噂があった。ある日、町で実際にバラバラ死体が発見される。

父ら警察が事件の捜査に当たるのと並行して、順も友人と事件解決のための材料集めに奔走する。大人の探偵ではなく、子どもの視点でお話が進むのが新鮮だ。

残酷な事件と、対照的な温かさ

『刑事の子』という題名には、子どもが主人公で、日常の謎を解決するような平和なお話かな、という印象を抱くが、そんなことはない。描かれているのは、目を背けたくなるような残酷な事件だ。

一方で、順の家にはハナという通いの家政婦がいて、このハナがとても温かい、安心感を与えてくれる人なのだ。ハナらが作る温かい雰囲気が、このお話の中で救いとなっている。

こちらの作品は、『東京下町殺人暮色』という作品が改題され、光文社文庫プレミアムとして刊行されたものだという。まだ読んだことのなかった宮部みゆきさんの作品と出会えて良かった。

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