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【日向坂文庫#11】『学ばない探偵たちの学園』東川篤哉(表紙 濱岸ひより)

東川篤哉さんと言えば、私が真っ先に思い出すのは『謎解きはディナーのあとで』。最近新作が出たことでも話題のこの作品、最初の作品発行が10年以上前というのには驚かされた。そんなに月日が経っているのか!

今回書いていくのは、日向坂46の2期生濱岸ひよりさんが表紙を務める『学ばない探偵たちの学園』である。

学園内で本物の密室殺人が発生

鯉ヶ窪学園に転入した高校2年生の通は、文芸部に入部しようと決めたはずが、思いがけず探偵部に入部する。

部員は本格ミステリ好きな3年生の先輩2人。1人は部長の多摩川さん、もう1人は八橋さん。ミステリについて何も知らない通は、先輩おすすめの本を読みながら日々を過ごすが、先輩たちと密室談議をした日、学園で本当に密室殺人が起こる

密室状態の保健室のベッドに、血まみれの男が横たわっていたのだ。その男は学生ではなく、鯉ヶ窪学園の芸能コースに通うタレントを盗撮しようとするカメラマンだった。そして、悲劇はそれで終わらない。

丁寧な描写で現場の状況やトリックが目に浮かぶ

私は最初、舞台が普通の高校ということもあり、本当の事件なのか疑う気持ちを持っていた。血まみれなのではなく赤い絵の具で演出されているのではないか、などと考えた。

しかし、刑事がやってくることもあり、本物の事件なんだと認識を改めた。

描写が丁寧なので、状況を想像しやすく、面白かったし、刑事や先生、高校生たちのキャラクターも味があって良かった

ミステリ好きはくすっとしてしまう場面も

通はなりゆきで探偵部に入ることとなっただけでミステリ初心者なので、ミステリ好きが読むとくすっとしてしまう場面がある。

◯美術の久保先生が「『灰色の脳細胞』を駆使して、密室の謎を解くなどということには、格別の興味を引かれたりするんだろうね」と言うのに対し、通は「なんだそれは。知らない」と思い、特段反応せず無難な答えを返す。
◯美術の久保先生「真犯人はオランウータンだったりしてな」
通「ははは、馬鹿な。そんな話は、仮にミステリとしても三流ですよ。そんな小説書く人がいたら、みんなの笑い物ですね、きっと」

通はこの場面で、実際に久保先生から「君、本当に探偵小説研究部なのかね」と突っ込まれており、愉快な気分になった。

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