【日向坂文庫#1】『ココロ・ファインダ』相沢沙呼(表紙 河田陽菜)
大好きな日向坂46が表紙を務めている日向坂文庫(光文社文庫)22冊、すべて読もうと思っている。普段は電子書籍派だけれど、久しぶりに紙の本を購入した。
日向坂文庫を手に取る方は、とりあえず推しが表紙のものを買って、あとは中身が面白そうなものを…という感じかと思う。ここでは、中身で選ぶときに少しでも参考になるように、感想等を書いていきたい。
初めに読んだのは、河田陽菜さん表紙の『ココロ・ファインダ』。
写真部の女子高生4人が、活動を通じ、抱えていた悩みを乗り越えていく。外見や性格のこと、理想と現実のギャップ、周りの大人や友人との関係。このお話は4章で構成され、1章ずつそれぞれが主人公になっている。
女子高生だったときに読んだなら、自身を登場人物に重ねて、嫌なこともあるけれど明日からも頑張ろう、と前を向く糧にしていたのではないかと思う。学生の皆さんには、彼女たちの悩みそのものが刺さるのではないか。
また、各章、謎が次第に明らかになるという一面もあるので、ミステリ好きな人(私も好き)は、その方向からも楽しめるだろう。
しかし、社会人の私にとって一番印象的だったのは、登場人物全員が「自分」と真摯に向き合っていることだった。外見や性格、届かない理想、周囲からの理解に悩むのも、全て「自分」というものに真剣に対峙しているからだ。私は大人になって、良くも悪くも、学生の頃に比べて自分を意識しなくなっていた。
時に苦しくても、「自分」とは何者か思案すること、「自分」が他人からどう見えているか想像すること、「自分」に何ができるか思いを巡らせること、どのような「自分」になりたいか懸命に考えること。それこそが青春なんだ、とこの小説を読んで感じた。
登場人物たちに近い世代も、もっと大人も、それぞれの味わい方ができる、素敵な青春小説だ。