~君の名前で僕を呼んで 5th Anniversary~朗読劇 「想像超え」尽くしのピアノ裏話 第二楽章 ありがとうオリゴ糖 阿部顕嵐スクワラン
第一楽章では幻の楽器「オークラウロ」のご縁から、朗読劇「君の名前で僕を呼んで」にピアニストとして参加することになった私、永田ジョージ。
永田ジョージ?おまえ誰やねん。
そうですよね。では私が誰なのか、全知全能のAIチャットボットChatGPTに聞いてみましょう。
AIさん、それ違いますね、ピアニストってところ以外は全てあってない。そんな別の世界線に生きる圧倒的に優秀な永田ジョージはさておいて、バタバタと始まる音楽リハーサルと合わせ稽古。
ほぼ初対面から作品の中のイタリアを作り上げるのは、僕ら3人のミュージシャン、演出家の岡本貴也さん、制作スタッフの皆さん、そして俳優の醍醐虎汰朗さんと阿部顕嵐さん。
年齢は僕らの半分だけど、苛烈な現場をいくつも叩き上げで登ってきて、めちゃくちゃ実績のあるお二人です。
先入観なく弾きたかったので、初リハ前にはグーグル先生にはなにも聞きませんでした。
待って新海誠さん監督の「天気の子」の帆高君役で声優アワード新人賞取ってるやん…待って待って元ジャニーズで12歳から活動してるやん…想像を超える第2楽章やん…緊張するわ…ってなるのが目に見えてたから。
初稽古は空気が硬く、バチバチの緊張感で始まった読み合わせ+曲合わせの貴重な記録がこれ。
僕も譜面と脚本を読みつつセリフを聴きながら弾いてて、演奏に集中できていません。
劇の音楽はセリフきっかけで曲を始めて、セリフきっかけに曲を終えます。読む速さや間の取り方で曲を終えるタイミングに数秒〜10秒前後の幅があり、そこを狙って終わらすのは至難の業でして。
慣れるまでは、え?デンプシーロールするタイソンのワンツーにカウンター当てる方が簡単じゃない?は?横風16メートルの福岡空港にエアバス着陸させる方が楽では?と思うくらいに難しい。
更に、読み合わせの中で色々と改善点が見えてきて、「ここはもう少しセリフを立てたい」「ここからの音楽は無しにしたい」とバンバン直しが入っていくので、事前にさらった内容もどんどん変わっていく。
譜面に赤文字でメモを入れる間も、時間がカツカツなので「はいでは次のシーン、ページ12オリヴァーの台詞から」って読み合わせが進んでいくので、通常のリハの256倍は焦ります。
脳内の糖分が一気に無くなるので、定期的に阿部顕嵐さんが差し入れてくれたオリゴ糖チョコを戴きます。
ありがとう オリゴ糖
阿部顕嵐 スクワラン
醍醐虎汰朗 神のご加護
セイ
ジョイマン高木さんがいたら和むよなあと思いながらも音楽稽古が終わり、映画配給会社のSNSに載せるために一曲弾きつつメッセージを、と言われました。そうですか、では慎ましくバッハ、弾きますね。
疲れで変なテンションになり、「自分が思う面白そうなこと」やって滑ってます。これ見て「わー素敵、じゃあ観に行こうかな!」って思う方いたんでしょうか?
はい挙手!みんなー恥ずかしかったら目を瞑って。
うんうん…いなかったね!
カルチュア・エンタテインメントの皆さん、ティモシー・シャラメさん、ごめんなさい。
そうこうしている内に本番までの日数はぐんぐん減り、世界の中心であ゛ーーーーっ!!!!と叫びたいくらいに焦りがセカチュー化している僕をよそ目に、どんどん進む全員稽古。
豆腐メンタルなので、想像以上にボロボロです。ピアノを弾く指先から、出すべき音がモロモロとこぼれ落ちていきます。おぼろ豆腐か。
小野田坂道ばりに弱虫ペダルめっちゃ漕いで現場から逃げ出したくなりました。でも、僕を信じて起用してくれた土屋さんの気持ちに報いるためにも、なんとしてでも理想的な形にしたい。
困ったときは映画です。ポクポクチーン。
ヨーダ師範だったらなんていうかな。
そうだ、やるしかない。やるんだ。土屋さんに、岡本さんに、醍醐さんや顕嵐さんに、スタッフの皆さんに、映画に、原作に、ティモシーに、そしてアーニーの完璧な髪型をスタイリングしたバレンシア生まれヘアメイクのマンノーロ・ガルシアに、そして見てくださる方々の期待に応えるために。
フォースの力を信じよ。やるだけだ。家に帰って、深夜にひとり、ピアノに向かうのだ。彈け、絶望に追いつかれない速さで。次の日がバースデーライブでも。
余談ですが、バースデーライブには君僕5thのスタッフと土屋さんからお花が届いていました。どうせ僕なんてこの公演が終わったらお払い箱さ、そう思っていたので、想像を超えてくる気遣いに泣きました。
なんて素敵なチームだろう。もうやるしかない、やっちゃえニッサン。
そうして迎えた本番前日。
「本番も上手く行きますように」と願を掛け、サティの官僚的なソナチネを弾きます。
めっちゃ邪魔してくるやん、いや邪魔とか言っちゃ駄目だよね、2歳になるとピアノも弾いてみたいもんね。どうぞ弾いてください、思う存分間違えてください。
人生にやり直しは効かないし、本番もやり直しはないんです。だから、今だけは。
緊張しながら、いよいよ劇場入りです。恵比寿ガーデンホール、我が家のドアを出て徒歩10秒です。ジョエルじいさん、行ってくるねーってもう着いた近い。
エレベーターで3階に上がり、みなさんに挨拶をし、ドキドキしながらステージに向かいます。
「朗読劇」と聞いて、僕が想像していたのはこちら。
「岡本さん、脚本読むだけだから、これでいいですよね?え?違う?全然違う?なになに、セットを、はあ、プールの再現?
ええ、なんですか、七色に光ってビュンビュン動く照明?え、ダンスホール?エリオ達がじゃれ合うプールの水に、雪まで?
え、音楽隊にも衣装着せるんですか?は?予算?
困ったなあ、でもやるしかないなあ、こんな感じでどうですか?」
(引用:エンタステージ https://enterstage.jp/news/2023/01/115521.html )
え。
本気で思ってたんと違う…
これ朗読劇じゃなくてもはやミュージカルじゃないの?スケールの大きさを、本番前日に知った僕。
想像超えすぎワロタ第2楽章もそろそろ終盤ですが、素敵なゲネプロの取材記事、音楽についても触れて下さったエンタ★ステージさんに、末席からお返事します。
あのシーンは、当て振りなしで、リアルタイムでギターもピアノも弾いてます。日本の劇で海外映画の中の曲や音を使うと、権利委譲されているJASRACさんから「映画の曲使いましたね?使用料金払ってください」ってなるんです。
だから、今回の作品の曲はバッハとサティを除いては全てオリジナル。映画の雰囲気や曲調を解釈し、朗読劇のためだけに土屋さんがゼロから作曲しました。お世辞抜きで素晴らしかった…ちゃんとレコーディングして、サントラリリースしてほしいです。誰か!
バッハも、映画の通りにシャラメさんの弾き方を完コピすると、編曲の著作利用で請求がきてしまうんです。だから、原作のオマージュで演奏の雰囲気は寄せるけど、同じに弾いてはいけないんです。
雰囲気かぁ…テンポ、タッチ、音の遊び感、左手と右手のバランス、曲の終わり方。何度も映像を見ながら、自分なりのエリオを研究します。
「岡本さん、やっぱシャツ脱ぎますか?」
「ぬがんでええわ」
「ですよね」
脳内で一人芝居をして、本番に向けて腕をクロスする練習は欠かせないのです。
想像を超える 〜第三楽章〜 に、続きます。
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