ドリームマッチついに決定、武尊VS.ロッタン
兼ねてよりロッタンとの対戦を希望していた武尊はK-1を出た後に戦いの舞台をONEへと移した。
キックボクシングで世界No.1を目指す強豪たちが集うONEの中で“破壊神”と呼ばれるその男との戦いを実現させるために。
その為にISKAのタイトルマッチで復帰戦を行い、KO勝利でベルトを獲得することでその実力を改めて証明した。
敗れてもなお実力は衰えていないと。
そこからONEに参戦していった武尊は早くもロッタンとの対戦が予定される運びとなったが、ロッタンの怪我によって試合は中止、その代打として急遽出場することになったのがONEキックボクシングフライ級王者のスーパーレックだった。
移籍初戦でロッタンとのノンタイトル戦がチャンピオンとのタイトルマッチに変わるという衝撃的な展開が目まぐるしく起こり、武尊はデビュー戦から大きな話題を呼ぶことになった。
しかし結果は0-3の判定負け。
ボディを効かせてかなり良い場面を作り、もう少しで逆転というところまで行ったのだが、歴戦のチャンピオンはそう簡単には倒れず、積み重ねた経験値と技術でピンチを上手く凌いだスーパーレックは、ジャブやローキックで稼いだ大幅なリードを活かして判定勝利を掴み、ネームバリューのあるニューフェイスを相手に王座防衛を果たしてみせた。
ここで武尊は手が届かなかったという無念を再び味わうことになり、現役を続行することが厳しいという旨の発言も口にしている。
それでも武尊は再び奮起してONEで復帰戦を迎えることになる。
ここで武尊を動かす原動力となったのは、まだロッタンと戦っていないという大きなやり残しに対する想いだったのではないかと思う。
そして復帰戦となったタン・ジンとの戦い、ここで武尊は先にダウンを奪われることになる。
やや動きに硬さを感じる武尊はジンのパワーある一撃を警戒しながらバックステップで躱そうと対処するが、踏み込みながらパンチを打ち込むジンの一撃を躱し切れず被弾し痛恨のダウンを喫してしまう。
ダメージは深くなかったが、大事な復帰戦で大きなリードを奪われる厳しい展開となった。
しかしここで武尊は攻撃のギアを上げ、三日月蹴りによるボディへのダメージを中心にジンを少しずつ崩していった。
そして最終的に武尊は復帰戦で劇的な逆転勝利を収め、念願のロッタン戦に望みを繋ぐことに成功する。
再び辿り着いたロッタン戦
そして遂に武尊は、2025年の3月23日にさいたまスーパーアリーナで開催されるONE172のメインイベントでロッタンと対戦することになった。
この戦いにはONE史上最高の殴り合いが期待されているところもあるが、そうなった場合は恐らくロッタンが勝つことになるのではないかと思う。
何故ならそこはロッタンの土俵であり、得意な展開でもあるので実績に伴う自信と余裕が勝負強さに拍車を掛けることになると思われるからだ。
打ち負ける不安要素も武尊の方が多く、大一番への追い込み方や気持ちの高め方などを考えると、派手に散る方向に寄っていってしまうのではないかと思う。
武尊はロッタンとの戦いを最後の舞台として、負ければ引退することも考えていると思われる。
なので「全てを賭ける」ことになると思われるが、そうなると余裕がなくなり脆くなってしまう恐れがある。
これが結果的に派手な負け方に繋がっていってしまうのではないかと思うので、この姿勢にはやや危うさを感じる。
ロッタンはその耐久力とパワーに注目されがちだが、立ち技の攻防技術も一級品であり、試合作りも非常に巧みだ。
なのでこのロッタンから勝利を奪うにはまず「上手さ」でリードしていく必要があるだろう。
そうして試合の流れを握ることが出来て初めて勝負していくことが出来るのではないか思われる。
そういった対処も無しに真っ向勝負を挑んでいったとしても、ロッタンの方が一枚も二枚も上手となってしまうと思うので、武尊にはロッタンを激戦に引き摺り込むための工夫を期待したい。
武尊の大先輩である魔裟斗は、以前にロッタンに対してはジャブを突いていくことが有効になるのではないかという考察を口にしていたが、勝つ為にはそのようにしてロッタンにペースを作らせない策を準備することが重要になると思われる。
ただそうなるとファンが期待するような試合展開が少なくなってしまう恐れがある。
ここが難しいところではあるのだが、勝つことにこだわるのであれば、激しい打撃戦も意図的にコントロールしていく必要があり、頻繁にその展開を作ることは避けることが無難となってくる。
しかし、武尊はここまでの想いをぶつける気持ちで全力を投じていくと考えられることに加えて、激しい戦いを希望しているところがある。
そういった想いを踏まえて考えると武尊が迎えるこの大一番は、結果的に「勝利」よりも「魅せる」ことで成果を上げる一戦となっていきそうだ。
武尊の勝利を期待してはいるけれど、ビッグマッチに華を添える戦いが出来たとしたらそれはそれで素晴らしい結果となるのではないかと思う。
K-1の看板を長い間背負い続けて日本の格闘技シーンを盛り上げてきたスター選手が海外団体のスター選手と思う存分に戦い、世界中を盛り上げることが出来たなら、ファンも武尊自身も最高の気分になれるのではないかと感じる。
武尊はそれだけの距離をもうすでに走って来ているので、この戦いはその「勝敗」だけではなく、どんな終わり方を迎えるのかという内容の部分にも大きな注目が向けられることになる。
ONEでロッタンに勝つことは至難の技だと思われるが、武尊というファイターの闘いがここでどんな景色を魅せてくれるのか、そんなところにも期待しながらこのビッグマッチの開催を待ちたいと思う。
ロッタンという好敵手との戦いは、THE MATCH以上の記憶に残る戦いを生み出すことになるかもしれない。
リスペクトと熱い気持ちがぶつかり合う念願のドリームマッチに今から熱い視線が注がれる。