見出し画像

お寺の境内で反抗期を終えた、スランプ中だった私の話【京都】

長年、いろんな文字を書き連ねてネットに投棄してきたけれど『スランプ』なんてものとは無縁だった。
朝起きて、寝るまで、何となく書きたい話題が沸き上がってきて、サクッと文字の羅列を投稿するって感じの生活が長年続いていた。
もちろん、仕事もしますよ。なんなら、PCに向かって文章を書く仕事だったりします。
だけど、息抜きというか、どっちが息抜き?ってくらいに毎日いろんな場所に、まぁまぁくだらないことを投稿していた。

ところが、今年の春あたりから、文字が全く浮かんでこなくなった。
別の作業しながら、メモをしないといけないくらい文字があふれていた頭の中は、何も出てこず、空っぽ。
折しも、WEB雑誌の旅行記事の月連載が始まってすぐの頃だったから、めちゃくちゃ焦った。

旅行記事を書くには、取材する場所を決めて情報を集め、現地に行って取材し、これを文章化する必要がある。
校正などは編集部さんがやってくださるけれど、あんまりポンコツなものも出せないから2500文字ほどの文章を書くにはそれなりの時間がかかる。
PCに向かう前に、頭の中で文章構成なんかをぐるぐる考えているから、思ったよりも時間がかかる。
最初の情報を集めるところから第1校を出すまで、もちろん途中でほかのこともやってるけれど、最短で10日ほど、まぁ、そんな感じ。
だけれども、行きたいことろへ出かけて、そこで感じたことを頭から取り出して文章に置き換える作業は、けっこう楽しかった。
なにより、旅と文字が好きだった。

ところが、である。
それが、ある日を境にまったく楽しくなくなり、それどころか苦痛の種となった。
左手から、スマホが生えてるんか?って思うくらい体と一体化していたスマホも、デスクに放置したままという状態がデフォルトになった。

思えば、京都観光が嫌すぎるというのが最初のつまずきだったと思う。
京都の旅を連載している関係上、毎月1回は京都の観光地に足を運ばねばならないと勝手に思っていたのだけれど、生まれてこの方ずっと京都に住んでいる私にとって京都は日常すぎて旅の興奮も驚きも感じられない場所だったから。
おまけに気候のいい季節はほとんどなく、冬はめっちゃ寒いし、夏は暑い暑い、梅雨時は嫌になるくらい蒸し暑い、最近は年中人人人であふれかえってる古臭い街のどこがおもしろいん?って感じ。
だけれども締切日は毎月やってくる。
新しいトレンドを見つけないといけない。
っていうか、京都人目線じゃなく、観光にやってくる人が得たい情報を探さないといけない。
追われる、追われる、追われる感じ。

そして、その鬱々とした気分は、大好きだったはずの本来の意味での旅行へ行く気分も萎えさせ、日常の面白エピソードとか今日の一言とか、なんだかんだと「書く」作業全体に伝播し、頭の中から文字が消えた。

多分、故郷に対する反抗期だったんだと思う。
全く書けなくなって、焦る事約3か月。
その後は、あきらめが3か月。
何をしてたかって言うと、本を読み漁っていた。読みたくて買って積んでいた本、いただいた本、仕事で読まないといけないから買ったけど放置しておいた本、漫画、えほん、目につくものを端から読んだ。

台風がいくつか去って、少し涼しくなった昨日の朝目が覚めたら、突然「今日はどこ行こか」って思い立った。


「近所からでもええやん。
最近、なんかイベント多いし、散歩がてら本願寺さんでも行ってみよか。」

ぶらぶら歩いて出かけたいつもの場所は、秋のデジタルサイネージイベントの準備中だった。
なんか、提灯つってあるやん。おもしろそうやん。
あぁ、遠くじゃなくても、いつもの場所でも、よく見たら面白いものぎょうさんあるやん。
見上げたら、本願寺さんの屋根は見事なまでに人くて大きい瓦屋根。昔は、ハトの豆売りのおっちゃんが居はったけど、最近はフン害対策でいはらへんようになったやろか。
門から入ったとこにデンと植わってる銀杏の木ぃも、もうすぐ見事な黄色になるんやったなぁ。
子どもの頃から遊び場だった広いお寺の境内で、ワクワクが戻ってきた。
あまりに当たり前すぎて、住んでるところの良さを、住んでる人がいちばん見逃してたのかもわからんなぁ。

こうして、突然、6か月にわたる故郷への反抗期の終わりが訪れた。



ノリノリであらゆることを楽しんでいると思っていたピーク時にポキっとやる気がなくなるときもある。
本人は気が付いてなくてもやり過ぎってことがあって、ちょっと休まなあかんって、神様か仏様か内なる自分かわからんけど、そういう存在にいわれてる時ってあるんやな。

そして今日、久しぶりにやる気満々でPCに向かっている。
ちなみに、本願寺さんで反抗期を終えたあと、琵琶湖の湖畔にあるスーパー銭湯でぐうたらしてきたから、もしかしたらそっちのご利益かもしれませんが、また、旅行記書き始めました。

琵琶湖きれい






いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集