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【広島】日本のバウムクーヘンのルーツを訪ねて島旅に出た、の話
注・このお話は2023年5月に広島県を訪ねた時のお話です。
5月、広島サミットが行われた次の週末、瀬戸内海に浮かぶ島に行ってきました。
人口750人ほどの信号もコンビニもない島。
日本で初めてバームクーヘンが焼かれた島。
日本に酷い爆弾が落とされた時にたくさんたくさんの人の遺体が送られた島。
潮風と、波の音と、やさしい太陽と、悲しい歴史の島。
宮島で有名な厳島や、かつて海軍養成所があった江田島の間に位置します。
島の名は似島。
『にのしま』と読みます。
京都から似島までは新幹線と広島電鉄、そしてフェリーに乗り継いでいきます。
京都駅から広島駅までは約1時間40分。
路面電車の広電で広島駅から広島港までは約30分。
そしてフェリーで20分。
こうやって見ると、結構近い場所です。
お昼過ぎに広島駅に到着した私は、まず、美味しいランチを。
混雑するお好み焼きやブレイク中のつけ麺、名物のあなご飯をスルーして、中国銀行の裏にある老舗洋食屋『肉のますゐ』で腹ごしらえ。
特ランチはハンバーグ、オムレツ、牛カツが山盛り乗って950円。
マスタードではなく洋からしの効いた大人味のポテトサラダをお供に生ビールをギューッと。休日のささやかなぜいたくを楽しみました。
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お腹がいっぱいになり八丁堀から広電に乗車。
ちょうど広島交響楽団を応援するラッピングトレインに乗り合わせ、軽やかな音符の柄に包まれて気分の踊る滑り出し。
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そうこうしているうちにフェリー乗り場に到着です。
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フェリーターミナルは立派で、そこから瀬戸内海に浮かぶ島々や外国航路の船が発着しています。
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待機所に並んだ椅子の目の前にある大きな窓から見える似島は、人口の少ない島なのでフェリーもそうそう頻繁に通っているわけではありません。広島港に到着してフェリーの時刻表を見ると、まだまだ時間があります。そこで、いくつかあるお土産物屋さんを偵察することに。見慣れないほろ酔い紅葉と広島市の飲料メーカーの甘酒を発見。
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のんべえは、さながら光に吸い寄せられる蛍のようにアルコール飲料に引き寄せられるようです。。。
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おやつも食べ終えたところで、ちょうどやってきたフェリーに乗船します。
この日はお天気も良く、甲板に出て風に吹かれながら目の前に見える似島と厳島や江田島を眺めているとすっかり日常から非日常へのワープが完了、目指す似島へ到着です。
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島に宿は2軒。
バスもタクシーもありません。
フェリーの時間を伝えてあったので、宿のご主人がフェリー乗り場で出迎えてくれました。
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似島は、広島市内にある島の中で一番大きい島です。
広島市内からよく見える安芸乃富士と呼ばれる山は広島市民から親しまれており、市内の子供たちが遠足で訪れたり、トレッキングやキャンプを楽しむ大人が訪れたりします。
シーズン中には釣り客が訪れにぎわうそうです。
何が獲れるの?って聞いてみたら、色々獲れるけどタコが美味しいよって教えていただきました。ちっちゃなイイダコではなくて大きい蛸だそうです。スーパーでしか見たことがない生き物がこの海に生きているんだとちょっと不思議な気分になりながら今夜のお宿の高見亭に到着。
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宿の周りにはホントに何もありません。
宿のおばちゃんが作る畑と、目の前に広がる海。
時々鳥の鳴く声がして、時々汽笛の音がして、時々猫が甘えてきて、あとは静かな波の音だけ。
夕飯まで時間があったので浜に降りてみると、牡蠣のいかだにつるされた赤ちゃん牡蠣たちがよく見えました。
のどかで、静かで、優しい海。
第二次世界大戦の末期、広島市内に落とされた原子爆弾で亡くなった数えきれない人たちが、この島に運ばれたのだという悲しい歴史を持つこの島に少し胸が痛みました。
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宿には岩風呂があります。
宿のおばちゃんの話によると、「早く入らないと水が抜ける」そうなので、海から戻り、ゆっくりお風呂につかりました。
なんで「水が抜ける」んだろう・・・と考えていたら、ちっちゃくて幸福な笑いがこみあげてきました。
おばあちゃんの家に来たみたいだな。
すでに亡くなった懐かしい祖母の顔が浮かびました。
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さて、お待ちかねの夕食は思いのほか豪華。
一人前のお刺身の量に驚き、おばちゃんが作ったカボチャの甘さに癒され、ご主人が獲ってきた魚の煮つけに日本酒が進む。。。
おばちゃんは一見ぶっきらぼうだけど話好き、宿のご主人である息子さんの手料理を解説付きで自慢げに出してくれます。
自慢のお新香の作り方を聞きながら幸せな気分とボリューミーな食事の数々に満腹、まんぷく。
窓から入ってくる海風を受けながら夜は更けてゆくのでした。
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明けて朝、空には雲が多めではありましたが傘がいるほどでもなさそう。
たくさん旅をしているけれど、直前まで嵐が来ていても旅先で傘が必要になることはほとんどなく、自分のことを勝手に『最強の晴れ女』と自負している私。
今日も傘は要らないなとご満悦で朝食へ。
昨日あれだけたくさん食べたのに、美味しい香りをかぐと再び胃が活動しだす。そういうわけでご飯をお替りしたりして、もりもり朝食を食べ終え、再びご主人にフェリー乗り場まで送っていただきました。
ここまで読んできて、あれ?タイトルのバームクーヘンは?と思われるかもしれません。
そう、ここからが本番です。
今回の主役はこれ
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フェリー乗り場の向かいに神社があります。
似島竈神社の御旅所で地元の人たちから浜の宮と呼び親しまれている似島胡神社は、古くから漁業や海上運輸が栄えていた似島で海上交通の安全と家の繁栄を守ってきた神様です。
そのすぐ奥に似島の観光案内所があり、お目当ての似島バウムクーヘンはここに『置いて』あります。
私が訪れた日は、中に男性がいて、コーヒーの焙煎や販売をされていましたが、普段はバウムクーヘンは観光案内所の前に積んであって、横に設置されている透明な箱に頂いた数×1,300円を買い物客が自分で計算して入れるという完全性善説採用システムとなっています。
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このシステムを導入できるのは、みんなが心がきれいなんだと信じているからこそ。昔の日本にはこういうシステムがあちこちにあった事を思い出し、外からこの島を訪れる人は、この島の美しい心を汚すことなくお邪魔する必要があるんだなと感じました。
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この日、案内所でコーヒーを出してくれた男性は、この島の出身ではなく数年前に都会から引っ越してきたのだとおっしゃっていました。
写真を撮ることをお願いしたら、快く応じてくださった案内所の人とお買い物中のお姉さんたち。
いい笑顔。
自家焙煎のコーヒーは苦みが強くてとてもおいしかったです。
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帰宅してからバウムクーヘンをよく見るとおしゃれな包み紙に日本初のバウムクーヘンの歴史が書かれていました。
曰く、第一次世界大戦の頃、広島県物産陳列館で開催される展示即売会のために似島の検疫所でドイツ人のカール・ユーハイムさんが中心となって焼いたのが日本初のバウムクーヘンで、まさに似島が日本のバウムクーヘンの発祥の地なのだそうです。
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物産陳列館は第二次世界大戦の末期、原爆が落とされた爆心地にありました。日本人なら誰もが知るあの建物です。
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広島という場所は、日本人にとって特別な場所です。
それについては、先日行ってきた平和記念館についていつか書きたいと思っています。
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似島バウムクーヘンは私たちが見慣れたものより少し固め、焼き菓子の特徴がよく表れている香ばしいお菓子でした。
ちなみに、ここに登場するカールユーハイムさんは、その後日本に残り、喫茶店「JUCHHEIM'S」を神戸に開店し、このお店が現在の株式会社ユーハイムの礎となりました。
関西人が、モロゾフのプリンと並んで大好きなユーハイムのフランクフルタークランツあらためユーハイムクランツ。
子供のころから大好きで、何かにつけ食べている私のソウルフードです。
今もきついことがあった時には泣きながらホール食いします。。。
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そしてこちらが昨日買ってきたユーハイムのバウムクーヘン。
バウムクーヘン沼にどっぷりつかる春の午後。
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