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作家の先生に原稿を見てもらった/『プラダを着た悪魔』から、どうやって読者を惹きつけるのか学ぶ【2024/9/16】
作家の先生に原稿を見てもらった。
先日、書き上げてから遂行作業を進めている長編小説について、ココナラの講評サービスを利用してプロの作家の先生に原稿を見てもらった。
今後もっと面白いものを作れるようになるために、今の自分が抱えている問題点を知ろう。
正直、クオリティに自信が無い中でプロに見られるのは怖いけど、お金を払ってボコボコにしてもらうことにしよう。
そう思って、覚悟を決めていた。
そうして講評結果が届いたのが、先週の金曜日。
ドキドキしながら届いた講評を読むと、ありがたいことに最初はお褒めの言葉から書かれている。
ストーリーとしては良く出来ている、人物も良く描き分けられている、文章は細かい部分の指摘はほとんど無かった、と。
嬉しい。
考えてみれば本格的に小説を書いたのは初めてで、まだどこにも公開していないから「誰かに読んでもらう」という経験自体初めてのことだった。
メンタルブレイクも覚悟していたので、とりあえずこの週末を落ち込んで過ごす必要が無くなったと、ホッとする。
その一方で、自分が何度読み返しても意識出来なかった部分の指摘を多くいただく。このうち特に悩ましい指摘が以下の2つだった。
・良く出来ている反面、「よくある流れ」になりすぎている。
・エンディングのオチに無理やり感がある。
『プラダを着た悪魔』から、どうやって読者を惹きつけるのか学ぶ。
原稿を前にして、大まかに整理されたプロットを眺め返し、腕組みをして悩む。
「よくある流れ」「思った通り」を裏切る意外性ってなんだろうか。
このエンディングはどうすれば良くなるんだろうか。
いくら悩みあげても良案が浮かんでこない。
こんな時には他の作品を見れば、なにかヒントが見つかるかもしれない。
そう思って、ずっと前から見ようと思っていた映画『プラダを着た悪魔』を見てみる。
そしてこの映画が面白過ぎて驚く。
有名な映画なので、見たことがある方も多いのだろう。
頭は良いが野暮ったい主人公のアンドレアが、最先端のファッション誌「ランウェイ」の編集長、ミランダのアシスタントとして採用されるところから物語が始まる。
ミランダに無理難題を押し付けられ、失敗を重ねながらも成長していき、一流の華やかな世界で活躍するようになる主人公のサクセスストーリーは、見ていてすごく楽しい。
1時間半ちょっとの映画なのだが、何気なく見始めて、最後までずっと惹きつけられてしまった。
どうしてここまでこの映画に惹きつけられてしまったのか。
その理由を考えたときに、ストーリーの構図として「ただのサクセスストーリー」ではない点がキモになっているのだろうと感じた。
あまり経済的にも余裕が無く、野暮ったい生活をしていたアンドレアは、一流のファッション誌の関係者として昼夜を問わず仕事に勤しむようになる。
ブランド物を身に着け、華やかなパーティに出席し、業界人との交流を持つようになる。
しかし映画を見る僕たちは、アンドレアの成功と同時に、彼女がそれまでに付き合っていた恋人、友人たちから”ズレていく”ことを意識させられる。
元々は、中流~下流の世界で生きてきたアンドレアが上流階級の仲間入りをしようとすると、それまで付き合ってきた中流~下流の人たちとは決定的に価値観が違うようになる。
平たく言えば「住む世界が違う」。
また、アンドレアはファッション業界に染まり、ミランダのアシスタントとして確固たる立場を築いていくが、それで”本当の夢であったジャーナリスト”から遠ざかっていくことが描写される。
こんな形で「サクセスストーリー」とは裏腹にアンドレアが「失っていくもの」について、並行してスポットライトが当てられていく。
一体どうなってしまうんだろう、と。
そうして僕らは、エンディングの瞬間までこの映画に惹きつけられてしまうのかもしれない。
そのほかに、小さな展開にも工夫が凝らされている。
アンドレアが色々な問題を解決していくシーンの中にも、「失敗しそうな要素」が細かく散りばめられている。
例えば、コーヒーを運ぶシーン一つにしても、わざわざそれを”不安定に持たざるをえない”状況を作り出す。
そして実際に、時々にはアンドレアは失敗を犯す。
予定調和したり、しなかったりという部分を作るのである。
ちょっとしたハラハラ展開を続けることで視聴者の注意を引き付け、物語にのめり込ませるのだろう。
セリフ回しにも、フックが効いている。
(以下はネタバレになる。)
エンディングでアンドレアがアシスタントを辞め、報道紙(?)の記者の採用面接を受ける際に、面接官は、過去の上司であるミランダに働きぶりがどうだったか確認したという。
その時のミランダの返答が以下のようなものである。
「彼女には今までのアシスタントの中で最も失望させられた」
そしてセリフのあいだに、たっぷりと間を置く。
このあいだに僕たちは例えば、ミランダを見捨てたアンドレアに対する、ミランダの怒りなどを想像する。
しかしそのあと続くセリフは、
「雇わない者は大馬鹿者だ」
つまりミランダは、今までのアシスタントの中で最もアンドレアを認めていたのである。
いろいろな創作物に触れ合ってきた僕たちは、このセリフ回しにだって「良くあるセリフだ」と感じることが出来るかもしれない。
しかし実際に創作物を面白くするためには、こういうフックを効かせることが実際に必要なのだろう。
エンディングの「腑に落ちる」感じだってそうだ。
アンドレアが抱えていた「恋人や友人とのズレ」や「本来の夢はジャーナリスト」という問題についても、最終的には彼女自身の選択によって解決される。
そこに無理やり感は無く、僕らは晴れ晴れした気持ちでエンディングを見ることが出来る。
さぁ、ヒントは貰った。
あとは実際、自分の小説をどうしてやろうか、悩んでみる。